2007年4月27日(金)「しんぶん赤旗」

中米ニカラグア左派政権100日

進む 地域連帯・協力

教育・医療無料 停電も緩和へ


 中米のニカラグアで左派・サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)党のオルテガ政権が発足して二十日でちょうど百日が経過しました。新自由主義反対と貧困対策をかかげる同政権の変革の一歩をふりかえりました。(メキシコ市=松島良尚)


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 内外のメディアが共通して指摘するこの間の変化は、公教育と公共医療における完全無料化の実施です。

 就任演説で「教育へのアクセスを可能にする道」を強調したオルテガ大統領は政権発足直後、憲法が定めているとおり、義務教育無償を厳格に実施すると表明しました。国際通貨基金(IMF)の構造調整政策のもとで歴代政権が教育予算を切り詰めた結果、公立学校が父母に授業料などを求めるのは慣例になっていました。

医療の予算36%増える

 同様の問題があった公立病院の治療も無料になりました。それだけでなく、現地の報道によれば、婦人科専門の公立病院を中心に、病室への冷房やベッド間の仕切りの設置、トイレの改善などが進められています。

 オルテガ政権はこれらを実現するために、前政権が起案した今年度予算を修正し、教育、医療予算をそれぞれ5%、3・2%増やしました。医療予算は前年度比36%増です。

 おもな財源は、大統領や閣僚の給与をはじめとする政府経費の削減とともに、米州開発銀行などとの交渉によって実現した対外債務の帳消しです。医療、教育予算合計の約一割に相当する債務返済約四千三百万ドル(約五十億七千万円)の節約ができました。

 オルテガ大統領は就任翌日、「米州ボリバル代替構想(ALBA)」に加盟しました。ALBAは、キューバとベネズエラ、ボリビアが進めている連帯と協力、補完にもとづく地域統合構想です。このALBAが動き出しています。

IMFから自由になる

 今月十七日には、ベネズエラとキューバの援助によって首都マナグアに設置された三十二基のディーゼル発電機の起動式が行われました。マナグア市民は電力不足のため昨年半ばから、時には日に十時間以上に及ぶ停電に悩まされていますが、新発電機によって停電が大幅に緩和される見通しです。

 ベネズエラからはまた、優遇条件によるディーゼル油やガソリン、肥料も到着しています。キューバは今年中に、さらに三十六基の発電機を寄贈する予定です。両国の援助を受け、二〇〇九年に非識字者ゼロをめざす識字運動も広がっています。

 ALBAが前進する中、ニカラグアのサントス外相は十八日、ライス米国務長官と会談しました。詳細な内容は不明ですが、サントス外相は、「ライス長官は両国の信頼関係を願うと述べ、オルテガ大統領への敬意を託した」と述べています。

 ブッシュ米政権は昨年の大統領選挙でオルテガ氏に投票しないようあからさまに呼びかけました。しかし、オルテガ大統領が米国を含む中米自由貿易協定の維持を表明したことなどから、態度を和らげたといわれます。一方のオルテガ大統領は、米政府がテロ容疑者を保釈したことを正面から批判するなど、いうべきことはいうという姿勢をくずしていません。

 オルテガ政権の「百日」について、野党や現地の主要メディアは、大統領がFSLN本部で執務していることやベネズエラなどとの関係強化などを挙げ、「秘密主義」「権力主義」と非難しています。オルテガ大統領はこうした非難を拒絶し、「教育や医療を無償にしたことや停電問題の解決を報じないメディアがある」と反論しています。

 オルテガ政権の当面の大きな課題は、今月三十日から始まる国際通貨基金(IMF)との交渉です。IMFはニカラグアに約十四億ドル融資しており、融資条件とする三年ごとの経済政策見直しが交渉のテーマです。ニカラグアの新自由主義の土台となったIMFの構造調整政策は、社会予算に限度を設けるなど政府の手を縛っているのが現実です。

 交渉を目前にした二十一日、オルテガ大統領は「五年以内にIMFから自由になる」と表明しました。


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