2007年4月23日(月)「しんぶん赤旗」
個人情報など問題山積
あす全国一斉学力テスト
全国の小学六年生と中学三年生、約二百四十万人を対象に「全国学力・学習状況調査」(全国一斉学力テスト)が二十四日に行われます。学年全員が一斉に受けるテストは四十三年ぶりです。
テストは国語と算数(数学)の二教科。併せて生活・学習状況を記入する「児童・生徒質問紙」の時間があります。テストの採点・集計は、ベネッセとNTTデータが文部科学省から委託されています。
不参加の自治体も
国公私立の小中学校約三万三千校が参加しますが、愛知県犬山市教育委員会は「教育への競争原理導入で、豊かな人間関係の中で人格形成と学力保障に努めてきた犬山市の教育を否定することになる」として、不参加を決めています。私立も四割にあたる約三百三十校が参加しません。
学力テストは、文部省(当時)が一九五六年から小中高の5―10%を抽出する形で開始し、中二、中三は六一年から全員調査も行われました。しかし、学校や地域間の競争が過熱化し「学力コンクール化」の批判が出たため、六六年度までで中止しました。
今回も学力テストは、競争教育をいっそう激しいものにし、全国の学校と子どもたちを「序列化」するものとの批判が高まっています。その際、九月ごろに予定されるテスト結果の公表の仕方が問題となっています。
序列化につながる
政府は、「国全体や都道府県の状況を発表する」として、序列化につながらないよう限定して公表するとしています。
しかし、日本共産党の石井郁子衆院議員の追及に、安倍晋三首相は「学校を通じて父兄に公表していく」(二十日の衆院教育再生特委)と答えました。学校ごとの保護者への公表であっても、それらを集計して順位づけることは、十分可能であり、警戒が必要です。
文科省も結果の扱いは市町村、学校に委ねていますが、公表にあたっては「序列化につながらない取り組みが必要」としています。
無記名の希望増加
昨年の予備調査で、児童・生徒質問紙に「家の人と旅行に行くか」などプライバシーにかかわる項目があり、個人情報保護の点からも反発が広がっています。
小森陽一・東京大教授ら八人が呼びかけ人となって、「子ども全員の個人情報を企業にゆだねることに反対し、個人情報保護法・憲法にもとづく対応を求める」アピールを二日発表しました。
中三は個人ごとの番号を書くだけですが、小六はすべて記名式です。
こうした批判を受け、文科省は、「例外」として小六でも氏名でなく番号方式で実施することも認めました。大阪府や京都府は全教委が番号方式を希望しています。
京都府の九人の小中学生は十六日、学力テストは「個人情報の獲得が主たる目的だ」として、京都地方裁判所にテストの差し止め仮処分を申し入れました。
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