2007年4月23日(月)「しんぶん赤旗」

主張

全国学力テスト

参加押し付けと序列化やめよ


 文部科学省は二十四日、小学六年と中学三年のすべての子どもを対象に、全国一斉に学力テスト(全国学力・学習状況調査)を実施する予定です。

 全国学力テストは、昨年十二月に自民・公明両党が強行した改悪教育基本法にもとづいて実施されるものです。学校や子どもたちの競争をいっそう激しくして、「勝ち組」「負け組」にふるいわける教育を地方に押し付けようとしています。それは、二〇〇四年十一月四日の経済財政諮問会議で当時の中山文部科学相が「競争意識の涵養(かんよう)」をあげて全国学力テストの実施をかかげたことでも明らかです。

競争教育に広がる批判

 日本共産党の石井郁子議員が衆院本会議(十七日)や教育再生特別委員会(二十日)での質問でも取り上げたように、学校と子どもの「序列化」という全国学力テストのねらいは、教育の本来のあり方と矛盾します。

 全国の市町村教育委員会のなかで唯一全国学力テストへの不参加を表明している愛知県犬山市教育委員会は、「教育に競争原理を持ち込めば、子どもや教師の社会に格差が生まれ、豊かな人間関係を育(はぐく)む土壌をなくしてしまいます」と保護者用チラシで説明しています。

 少人数による学び合いの授業を積極的にすすめ、すべての子どもの人格形成と学力保障に全力を注いできた十年に及ぶ成果に立脚して、「競争原理と犬山の教育理念は相いれない」と、全国学力テストへの不参加を決めました。

 犬山市の市長は、全国学力テストに賛成の立場ですが、参加するかどうかを決めるのは市町村の教育委員会の独自の権限です。市長も「学力テストや教育のあり方について、これほど真剣に議論した教育委員会は恐らく他にはないだろうと、素直に認めたいと思います」と広報(四月十五日号)でのべています。

 政府は、「学力の向上」をめざして全国学力テストを実施するとしています。しかし、「序列化」や過度の競争で学力は向上するどころか、子どもたちが傷つき、学ぶ喜びが奪われています。

 「競争は教育の世界で否定すべきだ」とする意見が全国学力テストに賛成する専門家からも出されています。「一部官庁は、結果を公表し、学校を競争状況に放り込んで活性化を図る民間企業的政策を求めるが、教育の世界の中では否定すべきこと。教育は製品とは違い、公共性を持つ」(「東京」四月十七日付)と指摘しています。

 全国学力テストでは、国語と算数・数学のテストとともに、学校と子どもにたいして、家庭・学習状況についての多数の質問が用意されています。全国学力テストの回収、採点、集計、発送などの業務は、受験産業に丸投げされています。

 子どもの個人情報や学校情報が受験産業に握られることにたいして、保護者や市町村教育委員会のなかに不安が広がっています。

学校ランキングに反対

 安倍晋三首相は国会答弁で、「個々の市町村名や学校名を明らかにした結果の公表は行わない。学校間の序列化や過度の競争をあおらないよう配慮する」とのべました。しかし、これまで自らの著書では結果の公表を主張してきました。

 日本共産党は、「いっせい地方選挙にあたっての基本政策」でのべているように、教育をゆがめる全国学力テストへの参加の押し付けをやめさせ、点数公表による学校ランキングに反対をつらぬきます。



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