2007年4月20日(金)「しんぶん赤旗」
主張
米国産牛肉
安心・安全壊す規制緩和やめよ
四月二十六日からの日米首脳会談にむけて、アメリカ産牛肉の輸入問題が協議されています。アメリカ政府は、二十カ月齢以下に限っている輸入基準を撤廃するよう日本政府に圧力をかけています。
全頭検査は効率的
輸入制限の原因は、アメリカにあります。二〇〇三年十二月にBSE(牛海綿状脳症)感染牛が発見され、対策の不十分さが指摘されました。〇五年十二月の輸入再開にあたり、BSE病原体が蓄積しやすい危険部位の除去とともに、二十カ月齢以下の若い牛に限るという条件が日米で合意されました。しかし、輸入再開直後の〇六年一月、危険部位の混入が起こり再び輸入は停止されました。半年後に再開してからも、条件に合致しない牛タンが持ち込まれるなど三回も違反が繰り返されています。
月齢制限の撤廃の圧力は、安全な牛肉を安心して食べたいという国民の願いに逆行します。
アメリカ政府による規制緩和要求と軌を一にして、日本国内のBSE対策を見直す動きもあります。
国内ではいま、食肉処理場でのBSE全頭検査体制を維持するために、すべての都道府県が自主的に二十カ月齢以下の牛の検査を行い、それに対して国庫補助をしています。政府は、国庫補助について、〇五年夏から〇八年夏までの「経過措置」だとして、その後を明確にしていません。
全頭検査は日本でBSEが初めて発見された直後の二〇〇一年十月から、国の制度として実施されました。しかし、アメリカ産牛肉の輸入再開にいたる経過のなかで、日本政府は、アメリカ政府の圧力に屈して、二十カ月齢以下については検査しないことにしました。BSE検査なしのアメリカ産牛肉を輸入するために、国産牛の検査も緩和しました。
一方で、消費者と生産者の「全頭検査を守れ」の一致した声におされて、政府は、都道府県の自主的検査に国庫補助を出すことにしました。消費者の不安の払拭(ふっしょく)と、生産、流通の現場での混乱を避けるために事実上全頭検査を維持せざるをえませんでした。
これまで発見されているBSE感染牛は、最初の一頭を除き三十一頭です。このうち、死亡牛十一頭を除く二十頭が、食肉処理場での全頭検査で発見されています。感染牛は焼却されるだけでなく、飼料などの履歴が調査され、原因究明にも役立ちます。厚生労働省も、毎年の政策実績評価書のなかで、BSE感染牛を「確実に発見」する全頭検査の役割を評価して、「市場に流通させないようにするために有効」であり、「効率的である」とのべています。
と畜場での全頭検査にかかる国の予算は約十六億円です。日本で“BSEショック”が起こった〇一年度と翌〇二年度には約二千億円の予算がかかりました。
国内対策後退させるな
全頭検査体制によって、国民の国産牛に対する安全・安心が確保されて、国産牛の消費が維持されています。仮に国庫補助を打ち切るなら、国産牛に対する安全・安心の破壊です。全頭検査体制を維持し、その経費を国が負担するよう求めます。
輸入牛肉にも日本国内と同等の措置が必要です。全頭検査をはじめ神経組織の完全な除去、トレーサビリティー(生産・流通の経歴が追跡できる仕組み)が不可欠です。
アメリカ政府の圧力で国内のBSE対策が後退することがあってはなりません。