2007年4月16日(月)「しんぶん赤旗」

元抑留者に旅行券・置き時計・万年筆…

新たな慰謝事業に怒り

戦争犠牲への責任追及続ける


 元シベリア抑留者や恩給欠格者、引き揚げ者を対象に、政府の新たな「特別慰労品贈呈事業」が今月一日から始まりました。これまで慰謝事業をおこなってきた独立行政法人「平和祈念事業特別基金」は、今回の事業趣旨を「あらためて慰藉(いしゃ)の念を表すため」としていますが…。(本吉真希)


 「過去四半世紀、私たちが求め続けてきたのはポツダム宣言やジュネーブ条約に違反して戦後、旧ソ連やモンゴルに不当に抑留され、奴隷労働を強いられたことへの軍人軍属の派遣国=日本による国家補償だった」

 そう語るのは全国抑留者補償協議会(全抑協)事務局長の平塚光雄さん(79)=東京都=です。全抑協は十数年におよぶ裁判闘争で、立法措置による未払い賃金の補償を政府の責任として問うてきました。

 全抑協も加わるシベリア立法推進会議は今回の事業開始が伝えられるなか、二月に総務省と「基金」に要望書を提出。「八十代の元抑留者の状況を配慮し、旅行券でなく使い勝手のよい現金支給を」「韓国・中国・台湾の抑留被害者にも同じ扱いを」などと申し入れてきました。

 しかし、新たに支給される慰労品は戦後強制抑留者に十万円相当の旅行券等引換券、または置き時計、万年筆など。二〇〇九年三月末の請求受け付け終了をもって、一〇年九月までに「基金」を解散するとしています。

 この政府の対応に平塚さんは怒ります。

 「いちばん言いたいのは、労働賃金を支給するという戦後処理をきちんとしなきゃいけないのに、それを慰労品でごまかし、幕引きしようという態度。こんな二番せんじのものを出したことに、抑留者はみんな怒っている。受け入れることはできない」

 政府は一九八八年から「平和祈念事業」を開始し、書状と銀杯、十万円の慰労金を交付。慰謝事業の終わりを宣言していました。しかし、いまになって慰労品を再び支給する背景には、元抑留者らによる国会前座り込みや衆参両院での法案審議など、これまでの運動に押されたからでした。

 シベリア立法推進会議は前国会で否決された共産・民主・社民三党共同の法案に続く、新たな法案作成に向けて(1)従来の法案通り、抑留者への特別給付金支給(2)遺族への措置(3)抑留の真相究明―など要望事項十一点を提起。「第二次立法運動」にとりくみ始めました。

 「問題の本質は補償の金額ではなく、労働に対する対価がいまだ得られないという人権・人道の問題だ。私たちが捕虜にされたことは動かしようのない事実。戦争の犠牲にされた責任を生きている限り政府に追及していく。そして遺族にバトンタッチし、問題が解決するまで運動は続く」と平塚さんは語ります。


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