2007年4月16日(月)「しんぶん赤旗」
改憲手続き法案強行採決 地方紙が批判
“平和主義の足元切り崩す”
“問題点はあいまいのまま”
与党が十二、十三日、九条改憲の条件作りとなる改憲手続き法案を衆院で強行採決したのを受けて、地方各紙社説は、与党の強硬姿勢、拙速審議を批判し、法案の問題点を指摘しています。
北海道新聞十三日付では、法案推進勢力は「『中立的法案だ』と説明してきた。だが実際は、単なる手続きの印象を与えながら、改憲を容易にする内容でまとめられた」と指摘。「法案は、自民党新憲法草案が言う、自衛隊を『自衛軍』として明確に位置づける九条改定に結びつく。それは平和主義の足元を切り崩す一里塚の役割を果たすことになろう」とのべています。
どこへ向かうか
琉球新報十四日付も、「この国はどこへ向かおうとしているのか。やはり、『戦争のできる普通の国』なのだろうか」と問いかけ、「なぜ今、憲法改正の手続きを定める国民投票法案なのか。野党の賛同も得られないままに。自民党は結党五〇年の〇五年に『新憲法草案』を決定している。同党の狙いが第九条の改正にあることは明らかだ」としました。
東京新聞十三日付では「戦後の枠組み脱却を唱え、在任中の改憲実現を公言する首相が、こんなところで前面に出れば、法案に賛同する勢力を抱える民主党も含め、野党議員が身構えるのは当たり前だ」と安倍首相の意向を優先した「採決」を批判。「公聴会をこなしたといっても、言いっ放し聞きっ放しでは理解が広まるはずもない。そんな段階で数にものを言わせる国会の運びが、多くの国民に受け入れられるとは思えない」と断じています。
この点では中国新聞十三日付も、「中身よりも、首相の示した『締め切り』を優先した印象が強い。国の進む道を左右する法案だけに、これでいいのかとの思いがぬぐえない」としました。また沖縄タイムス十三日付も「採決は、安倍晋三首相が強調した『憲法記念日(五月三日)までの成立を』目指す動きと軌を一にしている」として、慎重審議を求める国民世論との矛盾を指摘。「憲法改正にかかわる法案は国民への周知徹底が大前提」「ここは今一度原点に立ち返り、審議に時間をかける必要がある」としています。
慎重な対応を
信濃毎日新聞十三日付では、十一日に発表された憲法学者百人余りの「声明」を引きながら、「最低投票率の規定が必要、との指摘は重要だ」「公務員、教育者の運動制限は『表現の自由』にかかわる。幅広い観点からの論議が欠かせない」など、法案の問題点を指摘。「法案の熟度、政治状況。どれをとっても、国民投票法案を成立させるのに適した状況とは言えない。国民の理解も足りない。慎重な対応を与野党に求める」としています。
京都新聞十三日付では、「なぜ投票年齢を十八歳以上とするのか。二十歳以上とする公職選挙法との整合性をどうとるのか。最低投票率を規定するか否か」など問題点を列挙。「これらのことをあいまいにしたまま法案を通すのでは、国会が立法府としての責務を軽視したに等しい」としています。
西日本新聞十三日付では「公選法にもとづく選挙なら公務員の運動に制限は必要だろう。だが、国民投票にまで規制を適用すべきかとなると、議論の余地がある」と指摘。「公聴会では、国民投票が一定の投票率に達しない場合、投票自体を不成立とする『最低投票率制度』の導入を求める意見も目立った」として、「こうした疑問を残したまま、与党が数の力で押し切ることは許されない」としています。
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