2007年4月14日(土)「しんぶん赤旗」

水谷建設元会長に実刑

東京地裁 法人へ罰金2億4000万円


 水谷建設(三重県桑名市)の脱税事件で、約十一億四千万円を脱税したとして、法人税法違反の罪に問われた同社元会長水谷功被告(62)に対し、東京地裁の朝山芳史裁判長は十三日、「多額の脱税による利得が会社に留保されており、刑事責任は重大」として懲役二年(求刑懲役三年)の実刑判決を言い渡しました。福島県の汚職・官製談合事件の端緒となった脱税事件は、建設業界と政官界の癒着ぶりを浮き彫りにしました。


 判決は、「工事の受注や円滑遂行のために裏金を捻出(ねんしゅつ)した」と認定しました。

 法人としての同社は罰金二億四千万円(求刑罰金二億六千万円)、元常務中村重幸被告(56)は懲役一年六月、執行猶予三年(同懲役一年六月)としました。水谷被告側は実刑は重過ぎるとして控訴する方針です。

 朝山裁判長は「ワンマン経営者として所得秘匿工作を行わせ、取引先に架空売買への協力を求めるなどした主犯格」と水谷被告を非難しました。

 弁護側は「簿外資産は一切ない」として執行猶予付き判決を求めましたが、同裁判長は「過去の不正な経理処理を精算するのに不正手段を用いるのは心得違いも甚だしく、有利な情状とはいえない」と判断しました。

 判決によると、水谷被告らは二○○四年八月期までの二年間、水谷建設の所得約三十八億一千六百九十八万円を隠し、法人税約十一億四千六百九十万円を不正に免れました。

 水谷被告は、収賄罪で起訴された前福島県知事佐藤栄佐久被告(67)への贈賄側ですが、公訴時効が成立しています。


解説

巨額裏金の使途解明を

 大手下請け水谷建設元会長の水谷功被告は国会議員や暴力団関係者など、幅広い人脈をいかしてゼネコンと政官界に影響力を発揮し、自ら「政商」と名乗っていました。今回の罪状は法人税法違反ですが、脱税して得た金は裏金として公共工事などの受注を有利にすすめるための工作資金などに使われました。

 その裏金の一部が前福島県知事佐藤栄佐久被告=収賄罪で起訴=にワイロとして渡り、収賄事件に発展しました。県発注の大型ダム工事の受注にからみ、前知事側所有の土地を時価よりも高額で買い取るなどし、時価との差額一億七千万円のワイロを提供したというもの。ダム工事を共同企業体で落札し、ワイロとなる土地の買い取りを水谷被告に指示したゼネコン・前田建設工業とともに、裏金による政界工作が明らかになりました。

 しかし贈賄罪は公訴時効が成立。両者とも罪に問われませんでした。

 福島県の汚職で明らかになったのは、巨額な裏金のうちの一部にすぎません。渡った先はほかにもあるのです。

 本紙「日曜版」が指摘した石原慎太郎都知事、三男宏高衆院議員(自民)の五百万円授受疑惑もその一つ。宏高議員の当選祝いとして、東京・銀座の高級料亭で会合した際、水谷被告側が用意した五百万円が石原氏側に渡った疑いです。宏高議員側の政治資金収支報告書にはこの五百万円の記載はありません。

 さらに水谷被告は、捜査段階で中部国際空港の受注をめぐって、暴力団や政治家に裏金を渡したと供述したとも報じられています。

 水谷被告は公判で「表に出せない簿外資金をつくったのは、請け負った事業活動を円滑にすすめるためだった。ためたわけではない」と弁明しました。しかし、不正に捻出した裏金の使途については、公判で明らかにされませんでした。

 水谷建設の裏金をめぐっては、さらなる全容解明が求められます。(官製談合取材班)


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