2007年4月14日(土)「しんぶん赤旗」
主張
集団的自衛権研究
米への忠誠心で憲法破るのか
政府は、憲法が禁止している集団的自衛権の行使について、何が許されるのかを事例研究する有識者会議の設置を決めました。安倍首相が施政方針演説で、「いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な類型に即し、研究を進めていく」とのべたことを実施にうつすものです。
柳井俊二前駐米大使をはじめ日米軍事同盟強化を主張するメンバーで構成する同会議が、安倍首相の諮問にこたえ、海外でたたかっている米軍を助けて日本が戦争にふみだすため、憲法解釈を変えようとするのは目に見えています。
米軍を防衛するため
有識者会議の研究対象は、公海上で共同作戦する米艦船を自衛隊が武力を行使して守る、アメリカ本国に向かう弾道ミサイルを自衛隊が撃破する、イラクなど海外で共同行動する米軍部隊を自衛隊が武力を行使して防衛することなどと集団的自衛権行使の関係です。
いずれもこれまでは憲法で禁じられた集団的自衛権の行使にあたるからといって実行できなかったものです。それをわざわざ研究し直すというのは、世界各地で軍事介入する米軍を自衛隊が「防衛」するためです。
アメリカ本国向け弾道ミサイルを自衛隊が撃破する行為は日本防衛と無関係です。米艦船への攻撃はアメリカと第三国が交戦しているからであって、交戦関係になく攻撃もされていない日本が米軍防衛の名のもとに武力を行使することは許されません。イラクなど戦場で米軍を助けるという議論も、自衛隊の海外派兵を禁止している憲法に背きます。これらはすべて解釈改憲でごり押しできるようなものではありません。
集団的自衛権は、「国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する実力行使を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」(一九八一年政府見解)です。自衛権行使の第一要件である「日本にたいする武力攻撃が発生していない」以上、その行使が「憲法違反」(二〇〇四年一月二十六日衆院予算委員会 秋山内閣法制局長官)であるのは当然です。
集団的自衛権行使を合憲とする余地があるという安倍首相の主張は黒を白と言いくるめるものです。
首相は集団的自衛権を「自然権」だといい、だから「行使」も当然という立場です。しかし、集団的自衛権は国連憲章にアメリカがもちこんだ「新しい概念」で「自然権」とはいえません。しかも集団的自衛権が持ち出されたのは、アメリカのベトナム侵略や旧ソ連のチェコスロバキア侵攻など国際的に通用しない事態ばかりです。戦争禁止を徹底した日本国憲法が認めるなど決してあってはならないことであり、その「行使」を求めるなど言語道断です。
同盟のため血を流す
安倍首相が集団的自衛権の行使に固執するのはブッシュ政権に忠誠心を示したいためです。日米同盟を“血の同盟”と呼び、アメリカが攻撃されても、自衛隊が「血を流すことはない。これで完全なイコール・パートナーシップと言えるか」(『この国を守る決意』)と強調しています。戦争放棄を決意した日本国民にたいして、アメリカのために血を流せと叫ぶ安倍首相は異常のきわみです。
安倍首相は解釈改憲にとどまらず、憲法を明文改定し日本を「戦争をする国」に一変することをもくろんでいます。集団的自衛権見直しの議論をやめさせるとともに、改憲を阻止する運動が決定的に重要です。