2007年4月13日(金)「しんぶん赤旗」
英有力シンクタンク警鐘
米英「対テロ戦争」批判
温暖化対策などの妨げにも
【ロンドン=岡崎衆史】英有力シンクタンクのオックスフォード・リサーチ・グループは十一日、報告書を発表し、米英両国が進める「対テロ戦争」が新たなテロの脅威を生み出していると指摘するとともに、地球温暖化など人類が直面する真の脅威への対処を妨げていると警鐘を鳴らしました。
報告書は「世界の安全保障問題が、『対テロ戦争』、アフガニスタン、イラク紛争、潜在的に紛争になりうるイランで占められていることが根本的に問題だ」と分析。これが「人類が直面する真の脅威から各国政府の注意をそらし、脅威に対する政府の対応を全く不適切にしている」と指摘しました。
真の脅威としては、(1)気候変動(2)資源をめぐる競争(3)富が少数へ集中し、大多数が疎外されている(4)軍事的対応の拡大と兵器の拡散―を挙げました。
報告書は対テロ戦争について、「破たんしているとともに、さらなるテロ攻撃の可能性を増大させている」と警告。対テロ戦争の一環とされるイラク戦争については、「新たなテロを生み出し、民兵とイスラム過激派の戦闘訓練の場をつくりだした」としました。その上で、報告書は、対テロ安全保障のために、イラクからの連合軍の撤退と国連部隊による安全維持を提唱しました。
気候変動については、「単に環境問題ではなく、安全保障の問題」だとし、社会、政治的安定を脅かすと指摘。ただし、温暖化対策での原子力の使用については、その技術や資材が核兵器開発と「無法国家」やテロ組織にそれが使用される可能性があるとして、これを否定し、持続可能なエネルギーの導入を急ぐよう求めました。
ソ連崩壊後の核兵器の問題では、近代化、核兵器の拡散、核の限定使用の危険性を挙げ、過去六十年維持してきた境界をこえようとしていると警告。拡散防止とともに、核軍縮を進めるよう要求しました。
また、兵器拡散の問題で、先進工業国がクラスター爆弾など民間人を多数殺傷する兵器を輸出しているとし、この問題で先進国の責任を追及しました。