2007年4月11日(水)「しんぶん赤旗」

主張

改憲手続き法案

採決への暴走は許されない


 主権者・国民の意思がなにより尊重されなければならない憲法にかかわる問題だというのに、民意をどこまで軽んずるつもりでしょうか。

 自民、公明両党が、改憲手続き法案を十二日の衆院憲法特別委員会で採決し、週内にも衆院を通過させようとしています。採決を急ぐべきではないという世論を踏みにじる暴走を絶対に許すことはできません。

国民は置き去りに

 自民党は、法案を審議している憲法特別委と同委設置前の衆院憲法調査会の審議時間を足すと五百時間以上だとし、「十分審議は尽くした。採決の環境は整った」(二階俊博国対委員長)と言い訳しています。しかし、法案の審議とはかかわりなく憲法についての一般的な調査をした調査会の審議時間まで加え、衆院がさも長時間の審議をしたかのようにみせかけるのは、とんでもない「水増し」です。

 採決するという与党の修正案は三月二十七日に駆け込みのような形で国会に提出されたもので、委員会での質疑はまだ一回だけです。五日に開いた中央公聴会では、議題にもなっていません。審議はまったく尽くされていません。

 最近の世論調査では、改憲手続き法案を「今の国会で成立させるべきだ」という意見は一割にも満たないという結果(九日発表のNHK調査)が出ています。法案への賛否の別なく、慎重な審議を求め、拙速な採決に反対する声が大多数です。

 弁護士や大学生などの市民グループが全国の千二百人余から回答を得た街頭アンケート調査では、「採決できるほどに審議が尽くされていない」とする人が65%を占め、法案の詳細は「知らない」という人が七割にのぼりました。国の基本にかかわる法案なのに、その内容も意味も多くの国民に知らされていません。与党の動きは、世論に背き、国民を置き去りにするものです。

 安倍首相は年初の会見で「私の内閣として(憲法)改正を目指したい」とのべました。自民党の総裁任期の規定からすれば、今後五年間ほどで改憲を実行するということです。これに符節をあわせ、米国と財界の改憲要求も強まっています。

 その改憲スケジュールに従い、今国会では改憲手続き法案を成立させるというのがいまの動きです。改憲派の勝手な都合で、改憲に直結する手続き法を無理やり、大急ぎで国民に押し付けようとしているのです。

 改憲派がしばしば口にしてきた「国民投票の公正・中立なルールづくり」という口実も影をひそめました。まさに改憲のためというねらいがあけすけです。

 改憲の目指す先が日本を「海外で戦争する国」につくりかえる九条破壊であることも、ますますはっきりしています。安倍首相の言動にきなくさいものを感じた国民の間で、改憲を懸念し、九条を支持、評価する声が高まっていることも、最近の世論調査などにみられる特徴です。

乱暴づくしの与党

 与党の改憲手続き法案がハードルを低くし、国民の少ない賛成でも改憲が成立し、国民の運動を制限するなど、改憲派に有利な不公正、反民主主義の仕組みづくりになっていることは重大です。

 改憲の目的が乱暴だから、手続き法の中身も乱暴、それを国会で押し通すやり方も乱暴という乱暴づくしの与党の動きは許せません。

 国民は改憲手続き法を望んではいません。徹底した審議を通じて、廃案にする以外ありません。



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