2007年4月10日(火)「しんぶん赤旗」

主張

新人材バンク

天下り禁止に逆らう自由化案


 安倍内閣が、国家公務員の再就職を一手にあっせんする「新人材バンク」を創設しようとしています。そのための国家公務員法の改定案を今月中にも閣議決定する方針です。

 新人材バンクは官僚の天下りを内閣の下に一本化する機関で、天下り禁止の世論に対する逆流です。

財界と行政の癒着の要

 天下りは高級官僚が特殊法人などを経て関係業界に再就職して高給と巨額の退職金をせしめ、受け入れた業界が行政を有利に動かす仕組みです。財界と行政の癒着の要です。

 天下りについて安倍首相は業界への「押し付け」をなくすと言っています。新人材バンクを提案した渡辺行革担当相は、省庁の「押し付け」を根絶し、「天下り問題の抜本的な解決」を図るとのべています。

 しかし、問われているのは「押し付け」かどうかではなく、天下りが財界と行政の癒着を生む仕組みの要となっていることそのものです。

 道路公団や防衛施設庁の「官製談合」でもはっきりしているように、財界と行政の癒着は高級官僚の利権と業界の高値受注という両者の利害が一致して発生しています。受け入れ側の財界は、天下りの「利用価値は十分ある」(奥田碩・前日本経団連会長)と言っています。天下り問題を業界が嫌がる「押し付け的なあっせん」に限定する議論は、国民を欺く論点のすりかえです。

 政権に天下りをなくす気がないことは、中川秀直・自民幹事長が「官民人事交流はどんどん推進すべき」であり、天下りは「事前規制」から「事後規制」に転換すると主張していることからも明らかです。

 実際に政府は、現行の天下り規制(退職後二年間は在職した省庁と密接な営利企業への就職を原則禁止)を廃止しようとしています。

 新人材バンクの狙いは、天下り規制を撤廃し、「官民交流」の名で天下りを自由化することにあります。新人材バンクは天下りを規制するどころか、好き勝手に自分たちの行き先を決める天下り自由化法案です。

 天下りは税金を食い物にするだけでなく、薬害エイズ・肝炎のように生命と健康にも深刻な被害を与えています。

 服用後の異常が報告されているインフルエンザ治療薬「タミフル」でも、輸入販売元の中外製薬に厚労省医薬局の元課長が天下りして役員に就任しています。こうした癒着がタミフルの異例のスピード承認や、異常の発生に対する厚労省の緩慢な対応に影響していたとすれば極めて重大です。

 インターネットサービスのヤフーの調査によると、新人材バンクをつくっても「官製談合」はなくならないと思う人が九割に上っています。多くの国民が見抜いている通り、政府・与党がすすめている新人材バンクは、天下りを要にした財界と行政の癒着をいっそう深める規制緩和の手段にほかなりません。

天下り・企業献金禁止

 いま求められているのは、こうした癒着を直ちに断ち切ることです。

 日本共産党が長年にわたって提案してきた天下り規制法案に盛り込んでいるように、天下りの禁止期間を五年に延長し、禁止の対象を公益法人・特殊法人に広げるなど、抜本的な規制の強化が必要です。

 道路公団の談合事件では、談合組織に加わっていた企業から自民党に十一年間で十六億円もの献金が流れていました。政官業の癒着と腐敗の構造を根絶するためには、天下りの禁止と並んで、企業献金の禁止が不可欠です。


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