2007年4月6日(金)「しんぶん赤旗」
ウラン制限量超え投入
原子燃料工業東海事業所 2月に3度
原子燃料工業(本社、東京都港区)は五日、茨城県東海村にある東海事業所で臨界事故(意図せず核分裂反応が連鎖的に起こること)を防ぐための制限量(核的制限値)を超えてウランを扱う事故が二月に三度起こっていたことを明らかにしました。
発表によると、二月二十四日の午後十二時十分ごろ、原料の粉末ウランを分析するため試料を缶から取り出した後、残りを缶に入れた状態で粉末取り扱いボックスを使って持ち出しました。
ウランは臨界事故を防ぐため、取り扱える量が保安規定で制限されています。原料の粉末ウランは濃縮度が4・9%だったため、粉末取り扱いボックスでは本来十五キログラム以下しか取り扱うことができません。ところが、缶の中には粉末ウランが十八キログラム入っていました。
同社によると十五キログラムを超える粉末ウランを扱う場合には、百六キログラムまで取り扱うことができる作業ボックスを使う必要があったのに、誤って作業をしたのが原因としています。
同様の誤った作業は、同日の午後四時三十二分ごろと、午後五時三分ごろにもおこなわれました。
これらの事故は、五日に二月の現場作業記録を確認した結果わかったといいます。
同社によると、粉末取り扱いボックスでは三十一キログラム以上で臨界になると計算されています。
解説
JCO臨界事故そっくり
今回明らかになった事態は、一九九九年に核燃料製造会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で起きた臨界事故に至る経過とそっくりです。
JCO事故では、ウラン酸化物と硝酸を混ぜ、硝酸ウラン溶液を製造した後、本来入れるべき容器とは違う容器に入れたために臨界事故が起きました。この事故では作業員二人が死亡、周辺住民を含む多数が被ばくしました。
今回も、本来百六キログラムまで取り扱えるボックスで行うべき作業を、本来十五キログラムまでしか扱えないボックスで行い、十八キログラム入れてしまいました。
この容器では臨界になる量が三十一キログラムだったために、臨界に至りませんでした。
しかし、誤った同じ作業がくりかえし行われていたことは重大です。JCO事故の教訓はどうなっていたのか、万一臨界事故が起きたときの防護対策はとられているのかが問われます。(前田利夫)