2007年4月3日(火)「しんぶん赤旗」
貧困の削減 着実に成果
国連「この25年間で最良」
南米左派政権
弱肉強食の新自由主義からの転換を掲げる南米諸国の左派政権は、社会政策の拡充や貧困削減で着実に成果をあげています。国連中南米カリブ経済委員会は、この地域の二〇〇三年から〇六年までの経済的、社会的な実績を「この二十五年間で最良」だと評価しています。(メキシコ市=松島良尚)
「われわれは、この国を立ち上がらせつつある」―アルゼンチンのキルチネル大統領は「世界水の日」の三月二十二日、水道が一年前に再公営化されたブエノスアイレス州の水利事業完成式典で述べ、貧困対策の成果を強調しました。
政府によれば、昨年第4四半期の最富裕層と最貧困層の所得格差は、統計をとり始めた一九九六年以来最低の三十一倍になりました。貧困率は〇五年比7ポイント減の26・9%。政権発足時の半分以下です。失業率は8・7%。この十三年間で初の一ケタ台です。
労働法改正
経済・金融危機を経て〇三年五月に発足したキルチネル政権は、元金や利子の削減などの民間債務再編により、約七百億ドル(八兆二千億円)の債務削減に成功しました。順調な輸出に伴い国内産業が回復しています。
同政権は、九〇年代に広がった労働者の保護規制を取り払う労働市場の柔軟化を改めるために労働法を改正。試用期間の短縮や、雇用期間一年につき一カ月分の賃金支払いを義務づける解雇補償などを盛り込みました。
中心的な貧困対策は、貧困ライン以下の児童、妊婦らを対象とする食料保障プログラムや、前政権から引き継いだ失業世帯主プログラムです。後者は、子どもを持ち養育義務を果たしている失業世帯主に、社会的な労働を条件に支援金を給付します。百四十七万人(〇五年十月)が受給し、七割が女性です。
インフレ対策としては、各業界との合意に基づく価格調整プログラムを実施しています。世界銀行などは「市場の力が完全に働く戦略」への転換を求めています。
消費税減税
ウルグアイでは〇五年三月に発足した左翼連合のバスケス政権が、貧困層の食料、医療、教育問題に焦点をあてた国家緊急社会計画(PANES)にとりくんでいます。
三月初めの大統領施政方針演説によれば、貧困層の割合は〇四年の22・5%から昨年は19%に低下。十七歳以下の子どもの四割以上に達していた貧困問題が最も大きく改善しました。
ウルグアイはアルゼンチンの経済・金融危機に直撃されましたが、同国の経済回復に伴いウルグアイ経済も順調に伸びてきました。
バスケス大統領は今年の優先課題として、消費税の21%への2ポイント減税などを盛り込んだ七月からの新税制実施、健康促進と予防を重視する全国的な医療改革、九月に終了するPANESに代わり全国民を対象として公正な社会をめざす「公正計画」などをあげています。
ブラジルでは、地理統計院が三月初旬に開いた第二回全国家計調査セミナーで、貧困層への支援金支給プログラム「ボルサ・ファミリア」が経済学者らに高く評価されました。同プログラムは千百万家庭に適用され、貧困人口率は〇一年から〇五年までに四分の三に低下。昨年だけで八百万人が貧困から脱出したといわれます。
ベネズエラではカベサ財務相は三月中旬、二〇〇二年末の反政府派の石油ストで悪化した貧困、極貧率80%が現在、39・4%にまで改善されたと発表しました。
その主な背景は、石油資源を国民の手に取り戻して生産を増やし、その利益をさまざまな社会プログラムに還元していることです。二一年までに貧困をなくす計画です。