2007年3月31日(土)「しんぶん赤旗」

文科相に教委「指示」権

教育3法案を国会提出

石井副委員長が談話


 政府は三十日、地方教育行政法と学校教育法の改定案を閣議決定し、二十七日の持ち回り閣議で決定している教育職員免許法等改定案を含め、教育関連三法案を国会に提出しました。三法案は改悪教育基本法の具体化で、教育の権力的統制を強化し、憲法に違反するものです。安倍内閣は同法案を今国会の最優先課題のひとつとし、会期中の成立をめざしています。

 焦点の教育委員会制度「改革」を柱とした地方教育行政法改定案は、(1)教委への文部科学相の指示権(2)私立学校に関する教委の助言・援助―などを新たに規定しました。同法改定案をめぐっては、公明党内で異論が残り、ぎりぎりまで与党内で調整が続きましたが、「私立学校の自主性の尊重」などを付帯決議や改定後の通知に盛り込むことで合意に達しました。

 学校教育法改定案には、改悪教育基本法の内容を踏まえ、各学校の目標・目的に関する規定を見直しました。義務教育の目標には「我が国と郷土を愛する態度」が盛り込まれています。

 教育職員免許法等改定案は、現行では終身有効の教員免許に十年ごとの更新制を導入する内容です。同改定案に含まれる教育公務員特例法改定案は、「指導が不適切な教員」の認定を行う新たな制度も打ち出しています。

 与党は、特別委員会を衆院に設置し、集中的に審議を行う方針。一方、民主党は三法すべてに対案を提出する方針です。

権力統制の具体化

石井副委員長が談話

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 教育関連三法案が閣議決定されたことに対し、日本共産党の石井郁子副委員長は三十日、「子どもたちの未来と教育を安倍政権の犠牲にするわけにはいきません。『教育三法案』を廃案に追い込むとともに、憲法にもとづいて子ども一人ひとりを大切にする教育を実現するため、国民の皆さんと力を合わせて奮闘します」という談話を発表しました。(談話の全文

 石井氏は、教育三法案は、改悪教育基本法の具体化で、教育への権力統制を具体化するものだと指摘。法案は「子どもとの信頼関係を基礎とした文化的な営みとしての教育の条理に反するものであり、国民の思想・良心の自由を保障し、教育の自主性を保障した日本国憲法の原則と相いれない」と批判しました。

 そのうえで、「いま国民がねがっているのは、いじめや学力などの問題をていねいに解決するために、三十人以下学級の実施など、国際的にもおくれている教育条件を抜本的に整備することであり、過度の競争教育から子どもたちを解放することだ」と述べています。


解説

更新制で教員に圧力

目標に「愛国心」を明記

 三十日に国会提出された「教育三法案」には、国が教育を権力的に支配・統制する方向が貫かれています。三法案の全体を通してみると、国が決めた教育方針を、「教委→学校→教師→児童・生徒」と浸透させる仕組みが浮かび上がってきます。

 地方教育行政法改定案で、国は文科相の教育委員会に「指示」するという強い権限を与えられ、地方へのにらみをきかせます。この権限は、地方分権一括法で失った文科相の権限の“復活”といえます。

 学校教育法改定案には、「副校長」「主幹」「指導教諭」という新たな職を置くことができるとしました。多くの管理職を配置することで、教員を政府と行政言いなりにしようというものです。

 教員免許法等改定案は、教員免許に十年の更新制を導入します。同時に「指導が不適切な教員」の人事管理の厳格化も盛り込みました。教員の身分を不安定にすることは、教員への有形・無形の圧力となり、教員の目の向く先を子どもではなく行政の方に変えるものです。

 また、義務教育の目標に改悪教育基本法に盛り込まれた「国と郷土を愛する態度」などを新たに明記したことは、子どもたちに政府に都合のいい特定の価値観を押し付けようというものです。

 二十九日の教育再生会議(安倍首相の諮問機関)の学校再生分科会は、「道徳を教科にする」方針をまとめました。忠君愛国教育を施した「修身」科の廃止という戦後改革の原点を葬り去る驚くべき時代錯誤です。主査の白石真澄・東洋大教授は「将来的には成績判定がされるだろう」と述べました。「愛国心」などの徳目を評価の対象にしようとしています。

 これは、思想・良心・内心の自由を保障した憲法一九条違反です。

 教育への権力統制は、従来の公立学校にとどまらず、私学へも露骨に行おうとしています。 

 旭川学力テスト事件最高裁判決(一九七六年)は、憲法を根拠に教育内容に対する「国家的介入はできるだけ抑制的であること」としました。教育三法案は、この最高裁判決にも反するものです。

 教育の条理に反し、学校現場を破壊する教育三法案は廃案しかありません。(小林拓也)



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