2007年3月28日(水)「しんぶん赤旗」
改憲手続き法案・与党「修正」案
改憲への第一歩許さない意思を
自民、公明の与党が二十七日に、提出した改憲手続き法案の与党「修正」案は、改憲案を通しやすくするために不公正・非民主的な仕組みをつくるという同法案の本質をあますところなく示しています。その改憲案は、「海外で戦争をする国づくり」のために国民が望まない九条改憲案が柱となっており、手続き法案が九条改憲と地続きであることは明りょうです。
委縮効果も重大
与党は「修正」案提出にむけた最終段階で、国民投票運動にかんする公務員の行動を公務員法上の政治活動として規制する方向を復活させました。これは、「このままでは、公務員による改憲反対運動が繰り広げられ、改憲阻止法案になる」などと主張する右翼改憲団体「日本会議」系議員の圧力を受けて盛り込んだ内容です。
堀越事件でみられたように公務員の活動に対する不当な弾圧が加えられる危険性があり、その委縮効果も重大です。
公務員、教育者を規制する「地位利用による国民投票運動の禁止」については、「罰則を削除した」といいますが、公務員法違反者は罰則が科せられます。「地位利用」も行政処分で対処するとされており、公務員・教育者から主権者としての自由を奪う内容です。
その上「修正」案では、改憲手続き法案で初めて導入される「組織的多数人買収・利害誘導罪」を残しました。組織により「金銭」「物品その他の財産上の利益」等を供与して勧誘するなどの行為を処罰するという規定です。これを口実とした警察による尾行捜査など、市民運動への不当な介入を招きかねません。
問題点そのまま
その上、これまで指摘されてきた重大な問題点もまるごと残されています。
最大の問題点は、国民投票での最低投票率の定めがないため、どれだけ投票率が低くても投票が成立することです。「国民の過半数」を有効投票総数の過半数としていることとあわせ、有権者の一、二割台の賛成でも、改憲案の承認とされかねません。
多額の資金が必要なテレビなどの有料広告は投票日二週間前まで自由。多額の政党助成金を受け取り、財界をバックにした改憲勢力が、金にあかせて、CMを買い占める危険もあります。
国会の常設機関として、改憲原案の審査、提出ができる「憲法審査会」の設置も盛り込まれています。
提出者がいう「改憲のためでも護憲のためでもない、公正中立なルール」(昨年六月一日、自民・船田元議員)といえるものではありません。
なぜ、そうなるのか。与党がこれだけ不公正・非民主的な仕組みをつくるのは、与党が目指す改憲が国民の根本的利益に反するものだからです。自由で民主的な議論によって、「戦争をする国づくり」という改憲の本質があばかれ、改憲案が否定されることを恐れているのです。
重大なのは、一連の「従軍慰安婦」問題で、旧日本軍の関与や強制性を否定する発言を繰り返している右派議員が公務員の活動規制強化でも暗躍していることです。過去の戦争に反省のない勢力が、憲法を変えて「海外で戦争をする国」を狙っているのです。
安倍晋三首相は任期中に改憲を強行するといい、手続き法案を今国会中に通せと号令をかけています。それだけに、「憲法改定への第一歩を許さない」という国民の意思を、選挙でも示すことが、大事になっています。(藤原 直)
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