2007年3月28日(水)「しんぶん赤旗」
主張
育児と仕事の両立
日航は社会的責任を果たせ
日本航空の四人の客室乗務員が、育児・介護休業法にもとづき深夜業の免除を求めたところ勤務日数と賃金を大幅に減らされたのは不当だと訴えた裁判で、東京地裁が賃金の支払いを命じる判決を出しました。
仕事と賃金を奪う
一九九九年改正の育児・介護休業法は、小学校就学前の子どもを養育中の労働者が申請した場合、午後十時から午前五時までの深夜業を免除するとしています。客室乗務員たちは、深夜業の免除制度によって、仕事と家庭生活の両立をはかってきました。ところが、二〇〇三年八月、日本航空は、制度の運用を変更し、深夜業免除適用者の勤務日をこれまで他の乗務員と同様の月二十日だったものを、月一―十三日に減らしました。そして仕事を与えない日を「無給日」とし、日割りで賃金カットする制度に改悪しました。賃金は半分以下になり、中には月一、二日しか乗務日がなく、社会保険料・税金が引かれると、賃金が「赤字」になります。
育児と家庭生活の両立を目的とする育児・介護休業法の深夜業免除制度を、逆に“仕事と賃金を奪う”制度に変えるなど、こんな無法が通用するはずがありません。
日本航空は、「客室乗務員の仕事は、深夜時間帯を含む勤務が中核だから、深夜勤務をする意思がない以上、労務を提供したとはいえない」と主張しました。これは、育児介護休業法の深夜業免除規定を認めない態度です。
判決は、この日本航空の身勝手な言い分を退けて、“原告らに労務の提供の意思や能力があったことは明らか”と断じて、労務の提供を受けることを拒絶した日本航空の不当性を認定しました。
判決は、乗務しない日を無給日とする労働協約を結んだ連合加盟労組員には五―十三日(おおむね十日前後)の乗務を指示しているのだから、原告らの労働組合所属の深夜業免除者にも同程度の勤務を命じることは「十分に可能」だとしました。
客室乗務員たちが求めている仕事と家庭生活の両立は、ごくごく当たり前の願いです。これを保障するための制度の確立が企業に求められています。
現行の育児・介護休業法は、深夜業免除の代わりの昼間勤務確保を事業主に義務づけてはいないものの、昼間勤務がある場合の事業主の責任について明確にしています。厚生労働省の「育児・介護休業法のあらまし」は次のようにのべています。
「就業させることができる同職種の昼間勤務が十分あるにもかかわらず、深夜業の制限を請求した労働者を昼間勤務に就けさせず懲罰的に無給で休業させるといった取扱いは、深夜業の制限の制度の利用を躊躇(ちゅうちょ)させるものであり、不利益取扱いに当たるおそれがあります」
国会で、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員が指摘したように、厚生労働省の解説は、深夜業務の免除を申請したために仕事をほとんどとりあげられてしまった日本航空の客室乗務員の実態を告発しているかのようです。
少子化対策にも逆行
日本を代表する大企業で、仕事と家庭生活の両立を保障できないようでは、政府や財界が「少子化対策」を強調しても、絵に描いたもちにならざるをえません。
日本航空が、子育て中の客室乗務員から仕事も賃金も奪う無法を反省し、社会的責任を果たすよう求めます。