2007年3月27日(火)「しんぶん赤旗」
働けど… ―若者たちは (3)
家族4人非正規
仕事は夜 60万円貯金の夢
関東地方の食品会社で働く佐藤冬美さん(25)=仮名=は三カ月契約のアルバイト社員です。
長女の冬美さん。同居家族は、五十代の母親、二十代の次兄、弟、中学生の妹です。二十代後半の長兄は独立しました。
母親は公立保育所の調理師で、半年契約のパートです。手取りは月十一万円。次兄は郵便局と洋服店で働いています。パートの郵便局の収入は月約十二万円。洋服店のアルバイトは月約六万円。弟はホストクラブでアルバイトです。「弟は売れっ子のホストじゃないから月十万円から十五万円しか収入はありません」と冬美さん。月収約十五万円の冬美さんと次兄とがそれぞれ五万円ずつ、弟は三万円出して、家計を助けています。
冬美さんの就業時間は、午後十一時から翌朝の午前七時まで。時給は千円。深夜割り増しの午後十一時から翌朝午前五時までは千二百五十円です。「昼夜逆転の生活は免疫力が落ちて病気になりやすいです。病気になったら出費がかさみます。せめて時給がもう少し高くてもいいのでは?」といいます。
国民健康保険料一万三千円、国民年金保険料一万三千八百円を払うと冬美さんの手取りは十二万五千九百円。家に五万円を入れるので冬美さんが自由に使えるお金は月約七万六千円。「これまでの年金未納分などの支払いがあり、貯金はできません」。
仕事は二十五キロの粉と水を大鍋に入れて混ぜ合わせて菓子の生地を作り、生地に圧力を加えて形を整えるまでの工程に責任を負っています。
「生地に圧力をかけるとき眠気と疲労で意識がもうろうとしてきます」と冬美さん。「ギリギリの人数で時間に追われながらの作業です。なおかつ高品質なものを作らなければなりません。もっと余裕を持ってお客さんが安心して食べられるものを作りたいです」と顔を曇らせます。
仕事は一人でします。「機械が友達です」とぽつりと言った冬美さん。朝七時半すぎに工場から自宅に帰る通勤電車が「切ない」といいます。
「朝は一日が始まるときなのに、私は出勤する人たちと逆の流れで帰宅する。取り残されているようで悲しくなるんです」
冬美さんは高校卒業後印刷会社で正社員として三年間働きました。「機械相手の仕事に疲れはてて退社しました」。その後は、居酒屋でのアルバイトや登録派遣社員などいずれも非正規の仕事ばかりです。「母と兄は時給が千円未満。共産党がいうように最低賃金を千円以上にすることをぜひとも実現してほしいです。私もいつまでもアルバイトでいられません」と将来の不安を語ります。
「結婚に逃げちゃおう」と思うときもありますが、「夜勤の仕事で出会いはありません。家庭を持っても働きたいとは思いますが、やりがいのある仕事を正規雇用でみつけたい」。
冬美さんの夢は六十万円ほど貯金すること。貯金できたら、就職活動に時間を割くとか、専門学校に入り技術を身につけることに挑戦できるからです。(つづく)