2007年3月27日(火)「しんぶん赤旗」

仏ルノー 自殺相次ぐ

新車開発で仕事 倍にも

労組要求受け、会社が対応へ


 【パリ=浅田信幸】仏自動車大手ルノーの新車開発拠点で、昨年10月から今年2月にかけて3人の社員が相次いで自殺しました。この問題で労組側は過剰な開発計画によるストレスが原因として会社側に緊急対策を要求。これを受け、会社側はカルロス・ゴーン社長の陣頭指揮で、人員増や労働環境・人間関係の改善など緊急の労働者支援策に乗り出しました。


 自殺の原因は仕事上のストレスだとみられていますが、検察当局は勤務条件に問題がなかったかを中心に刑事事件として捜査を開始しました。

 パリ郊外にある開発拠点テクノセンターの社員が二月に自宅で自殺し、妻への遺書に「仕事がきつくて耐えられない」と書いていました。仏メディアによると、同社員は家にも書類を持ち帰って夜遅くまで仕事をしていたといいます。

 別の二人の社員は昨年十月と今年一月に、テクノセンターの敷地内で自殺しています。

 ルノーは、ゴーン社長の下で二〇〇九年までに二十六車種を発表する計画を打ち出し、テクノセンターではうち十九車種を担当。少なくとも年六車種を発表することになりますが、これまでの実績は年に三ないし四車種どまり。同開発拠点で働く社員は一万二千人で変わらず、仕事量は最大二倍にもなります。

 社員は職場ではほとんどコンピューターを相手にするだけで、各人がバラバラの状態にあるといわれます。

 労働総同盟(CGT)や管理職総同盟(CGC)など労組側は、一年前に打ち出された新車開発計画が社員に深刻なストレスを強いていると主張。大幅な人員増を含む抜本的な対策を要求してきました。

 自動車生産で日本第二位の日産自動車の最高経営責任者を兼ねるゴーン氏が三人目の自殺を知ったのは日本に出張中のこと。フランスに帰国後、直ちに執行役員会議を招集し、テクノセンターにも足を運んで社員の同僚や医師、人事管理部から事情を聴取しました。四日後の三月一日には管理職とエンジニアを集めた会議で「真剣な掘り下げた分析をし、この分析から具体的な行動計画を引き出す」と約束しました。

 十五日の執行役員会議が承認した「エンジニア支援行動計画」は、百十人の正規社員と二百人の派遣労働者の採用、労働環境専門の管理部長の任命などを柱とし、人間関係の改善と仕事の負担をバランスよく分割することをめざすとしています。

 CGTやCGCは、経営陣の姿勢の「顕著な変化」を歓迎するとともに、「重要なことは、現場で具体化をはかることだ」と指摘。また「個々人を査定する管理システム」が圧力となって、社員の間に「個人的な失敗を恐れる」雰囲気を生み出していると主張し、根本的な原因に踏み込んだ対策を求めています。


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