2007年3月27日(火)「しんぶん赤旗」
主張
来年度予算成立
福祉の心なくした冷たい政治
自民党、公明党の賛成多数で二〇〇七年度予算が成立しました。
貧困と格差の深刻な広がりに多くの国民が苦しみ、心を痛めているにもかかわらず、定率減税を廃止し、生活保護の母子加算の段階的廃止、雇用対策費の半減など、貧困問題をいっそう深刻にする予算です。
他方では、減価償却制度の見直しで七千億円、証券優遇税制の延長で一兆円など、労働者を貧困に押しやって空前の利益を上げている大企業、巨額の配当を受けている大資産家への減税をさらに拡大します。
ほんとうの政治の責任
衆参の予算委員会で日本共産党は、「子どもの貧困」「国民健康保険証の取り上げ」をはじめ、貧困の実態を具体的に示し、政治の責任を真正面から追及してきました。
これに対して安倍内閣は、貧困の深刻な実態すら認めない冷たい態度に終始しました。
低所得の母子家庭に支給している児童扶養手当を来年から大幅に減らす計画について、柳沢厚労相は「福祉から就労へ」の政策の一環だとのべ、この方向は「大いに促進されてしかるべきだ」と開き直りました。生活保護を受けている母子家庭の子育てを支援する「母子加算」の段階的廃止について安倍首相は、生活保護を受けていない母子家庭との「公平性の観点からおこなっている」と平然と答弁しました。
日本の母子家庭の母親は85%が就労し、先進国の中でも突出しています。それでも六割近くが貧困ライン以下の収入しかないのが実態です。
ワーキングプアをいっそう深刻にする「福祉から就労へ」のスローガンは、母子家庭の命綱を断ち切る口実にすぎません。
国連児童基金(ユニセフ)が二月に発表した調査報告によると、「孤独だと感じる」子どもが日本は英仏の五、六倍と異常に多く、自分の将来の仕事は「非熟練労働」だと思っている子どもが過半数に達し、いずれも先進国で圧倒的なトップになっています。複数の仕事の掛け持ちが常態になるなど子育て世帯のワーキングプアの広がりが、過度に競争的な教育とあいまって、子どもたちの安心と希望を奪い去っています。
日本共産党の志位和夫委員長は衆院予算委で次のように指摘しました。公平性と言うなら母子家庭の命綱を断ち切るのではなく、ワーキングプアの母子のくらしの水準を引き上げるために心を砕いてこそ、ほんとうの公平、ほんとうの政治の責任ではないか―。
大企業・大資産家への減税をやめれば財源は十分すぎるほど生みだせます。世界に例がない他国領土の米軍基地の建設費負担を含む巨額の軍事費、無駄な巨大港湾・ダムなど大型公共事業、国民の血税を政党が分け取りする政党助成金など、メスを入れるべき浪費は数え切れません。
問われているのは財源ではなく、政党・政治家の「福祉の心」です。
国民と共産党の共同で
「福祉の心」は民主党にも問われています。民主党は派遣労働の自由化や介護保険法改悪、母子家庭への児童扶養手当を半減する法案に賛成してきました。与党とともに貧困と格差を広げる政治を進めてきたことへの反省もなく、選挙を前に「格差是正」と繰り返すのは不誠実です。
くらしと経済の安定と安心を図る財政本来の役割を忘れ、国でも地方でも「逆立ち」した政治がはびこっています。広範な国民と日本共産党との共同で、政治に「福祉の心」を取り戻すとりくみが、ますます切実に求められています。