2007年3月26日(月)「しんぶん赤旗」

安倍内閣6カ月

危うさと もろさ あらわに


 安倍内閣が発足してから二十六日で六カ月になります。「美しい国づくり」を掲げたこの半年を、基本路線、外交、内政の三つの角度からみました。


基本路線

亀裂呼ぶ「強気」運営

 全国紙で最新の世論調査となった「読売」二十日付で安倍内閣の支持率は43・8%で、不支持43・9%。これで主要メディアですべて、不支持が支持を上回る結果となりました。(表)

表

表

 安倍首相は「支持率のために政治をやるのではない。戦後六十年たって、いまこそ後回しになってきた改革をやらなければならない」(五日の参院予算委員会)と居直っています。教育「改革」と改憲の二つで政局の「反動的打開」を狙う姿勢を強調。九条改憲と地続きの改憲手続き法案では、「三権分立」を侵して成立時期まで支持し、「従軍慰安婦」問題でも「強制性」を否定するなど、「安倍カラー」を鮮明にしています。

 「靖国」派は、「強気の政権運営を」(自民党の古屋圭司衆院議員)などと歓迎。右翼改憲派議員でつくる日本会議国会議員懇談会のメンバーが手続き法案のいっそうの改悪にむけて勉強会を開いたり、「安倍外交」を支援する議連づくりにうごいています。

 しかし、柳沢伯夫厚生労働相の「女性は産む機械」発言、松岡利勝農水相の光熱水費疑惑などで、閣僚をかばい続ける首相の姿勢には国民から批判が集中しています。歴史教科書攻撃などで盟友となった衛藤晟一前衆院議員の復党についても、自民党の党紀委員会で僅差(きんさ)で認められるなど、党内の不満の強さを示しました。

 ある政府関係者は安倍内閣の政権運営について、「固定的な支持層をひきつけ、三割の支持率を維持できれば十分だということだ」と解説します。「靖国」派と一体の政権運営は、党内でも、国民との間でも亀裂と矛盾をいっそう深めることは確実です。

外交

「靖国」の地金で孤立

 「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行ったというような強制性はなかった」

 「従軍慰安婦」問題で強制性を否定した、この安倍首相の発言が国際的な非難をあびています。

 きっかけは、米下院外交小委員会で審議されている「従軍慰安婦」問題での謝罪要求決議。安倍発言で決議案への支持議員が六倍化し、シーファー米駐日大使が安倍発言を「破壊的な影響を与える」と警告する事態になっています。

 中韓両国の外相が批判したほか、シンガポールやオランダ、オーストラリアの首相も不快感を表明。国内で「固定的な支持層」をひきつけようと、「靖国」派の地金を出したとたん、国際的に孤立した格好です。

 国際社会の懸念は、侵略戦争を肯定する勢力が憲法改悪をすすめようとしていることにも向けられています。シンガポール紙の連合早報は首相発言の背景に「改憲に執着する首相の政治信念がある」と指摘しています。

 実際、首相は「任期中の改憲」を掲げると同時に、それ以前にも海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使にむけた「研究」に着手。ブッシュ政権のイラク増派をいち早く支持しただけでなく、自衛隊のイラク派兵の二年延長方針を固め、派兵恒久法の検討まですすめるなど、日米同盟強化で突出しています。

 しかし、侵略戦争を肯定する一方で、憲法改悪によって「海外で戦争する国づくり」をめざす方向は、日本外交をいっそうの行き詰まりに陥れるだけです。

内政

暮らしの痛みに鈍感

 安倍政権はこの半年、「貧困と格差」拡大の大本にある「構造改革」路線を加速させました。

 “大企業の成長が経済を拡大させる”として、大企業・大資産家へは減価償却制度見直しや証券優遇税制延長で一兆七千億円以上の減税の大盤ぶるまい。庶民へは定率減税廃止で一兆七千億円の大増税を強いています。

 通常国会では、貧困の広がりを認めようとせず、庶民の暮らしの「痛み」に鈍感な安倍首相の姿があらわになりました。

 日本共産党の志位和夫委員長が、OECD(経済協力開発機構)のデータにもとづき、子どものいる世帯の貧困率の拡大の深刻さを追及しても、その事実すら認めませんでした。母子家庭にたいする児童扶養手当の削減中止を拒否するなど、冷たい姿勢です。

 一方で、世論を意識し、「再チャレンジ」や「成長力の底上げ」戦略などの一定の対応をとることを迫られましたが、貧困と格差を生んだ大本に手を着けようとしないため、なんら改善策を示すことはできません。

教育「改革」に執念

 安倍首相は、政権発足直後に教育再生会議を発足させるなど、教育「改革」を最重要課題に位置付けています。

 昨年成立した改悪教育基本法の具体化として、教育関連三法案を三十日にも閣議決定し、今国会で成立させる構えです。

 三法案は、「不適格教員の排除」を名目に教員免許更新制などを導入。国による教員の統制を狙います。また、教育委員会「改革」として、国の教育への介入を強めようとしています。同案には、与党内や地方団体から反発の声があがるなど矛盾もあります。


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