2007年3月25日(日)「しんぶん赤旗」
イラク撤退盛る予算可決
大統領、拒否の構え
米下院
【ワシントン=山崎伸治】米下院本会議は二十三日、二〇〇八年八月末までにイラクから米軍を撤退させることを盛り込んだ二〇〇七会計年度追加予算案を賛成二一八、反対二一二で可決しました。イラク開戦以来、撤退の「予定表」を設けた法律が下院で可決されたのは初めてです。
採決では撤退期限を盛り込むことに反対する共和党議員に加え、即時撤退を求める民主党の進歩派議員ら十四人が反対し、過半数ぎりぎりの可決となりました。ブッシュ大統領は採決直後に声明を発表し、「私の元に届いても拒否権を発動する。下院での賛否は近接しており、私の拒否権は覆されない」と強調しました。
追加予算案はイラク駐留米軍について、〇八年八月末までに戦闘部隊を撤退させるとしたうえで、ブッシュ大統領に対し、イラク政府が軍事、政治、経済それぞれの面で到達すべき基準を達成しない場合には前倒しして今年七月に撤退を開始し、十二月末までに完了することを求めています。
ただし、イラク軍を訓練している部隊や「特殊作戦」部隊、米軍基地などの警備部隊の駐留継続は可能で、こうした部隊は六万から八万人になります。撤退部隊の米本国への帰還は明記されておらず、周辺国の米軍基地への配置も可能です。当初案にあった対イラン武力行使禁止の条項は削除されています。
追加予算の総額は千二百四十億ドル(約十四兆六千億円)で、そのうちイラク、アフガニスタンの追加戦費は九百五十五億ドル(約十一兆三千億円)です。
そのほか二百億ドルが国内向けの予算となっていますが、そのなかには、牛乳、エビ漁関係の補助金など緊急性に疑問のあるものもあります。二十三日付の米紙ワシントン・ポストは社説で「多数派買収のための利益供与」と批判しています。
二十二、二十三両日にわたって行われた討論で、イラク撤退議員連盟共同議長のウォーターズ議員(民主)は「一千億ドルを大統領に渡して戦争を継続しては、私たちの目標は達成されない」と表明。進歩議員連盟共同議長のリー議員(同)は「戦争継続の予算に賛成することは、米軍兵士を危険な場所に置き去りにするものだ」と批判しました。同議連共同議長のウルジー議員(同)は「戦争に反対することと戦争継続のための一千億ドルに賛成することは両立しえない」、同議連のクシニチ議員(同)は「平和を望むなら、戦費の支出をやめよ」と訴えました。
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