2007年3月24日(土)「しんぶん赤旗」
薬害C型肝炎
国・企業に賠償命令
東京地裁 クリスマシンでも責任
血液製剤「フィブリノゲン」と血友病治療製剤で止血剤に使われた「クリスマシン」投与でC型肝炎ウイルスに感染させられて肝硬変や肝がんなど肝臓病になった被害者二十一人(二人死亡)が、国と製薬会社旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)など三社に総額十三億五千三百万円の損害賠償を求めた薬害肝炎東京訴訟の判決が二十三日、東京地裁(永野厚郎裁判長)で言い渡されました。
永野裁判長はフィブリノゲンについて「緊急安全性情報を配布して危険性について指示・警告する義務違反があった」として、国、製薬会社の賠償責任を認める判決を言い渡しました。また、クリスマシンについては八四年一月一日以降「C型肝炎(当時非A非B肝炎)の発症の危険性が高く、使用を限定するなど指示・警告を怠った」として製薬企業の責任を断罪しました。
その上で、国と三菱ウェル社など製薬二社に、一部の患者について一人当たり千三百二十万円から二千二百万円の賠償を命じました。
大阪、福岡両地裁に続いて三件目の司法判断も国と製薬会社の責任を認める判決となりました。クリスマシンについて製薬企業の責任が認められたのは初めてです。
しかし、投与時期をめぐって明暗が分かれました。争点は(1)フィブリノゲン製剤などの有効性・有用性と副作用の危険性についての判断(2)C型肝炎ウイルス感染による危険性が予見できたか(3)製剤投与と感染の因果関係(4)大阪、福岡両地裁判決では認められなかった「クリスマシン」による被害の責任――でした。
昨年六月の大阪地裁判決は、旧ミドリ十字に八五年八月以降から、国は八七年から責任を認めました。福岡地裁判決は国・旧ミドリ十字ともに八〇年十一月以降の責任を認めました。
記者会見した原告の浅倉美津子さんは「三たび責任を(司法は)認めてくれました。これをテコにして薬害根絶と、国と製薬企業に謝罪を求め、治療体制を整えるために頑張りたい」とのべました。
解説
国は原告の声を聞け
これまで「クリスマシン」を投与されてC型肝炎になった被害者にたいしては、国も製薬企業も責任がなかったと損害賠償の請求を棄却されてきました。三度目の東京地裁の永野厚郎裁判長は限定的ですが、製薬企業の「指示・警告を怠った過失があった」として損害賠償責任を認めました。この点はこれまでの判断より前進しました。
「クリスマシン」を投与されてC型肝炎になった男性原告(21)は「ミドリ十字に勝つことができてうれしい。しかし、国の責任が認められなかったのは残念」と語っています。
「フィブリノゲン」も「クリスマシン」も投与時期をめぐって明暗が分かれました。全国原告団長の山口美智子さんは「『認められたからうれしくって、認められなかったならば悔しい』といったことしか考えて裁判をしているのではありません。肝炎患者・感染者三百五十万人の健康と命を背負ってたたかっているのです」と会見で強調しました。
国は、ただちに責任を認め、被害者に謝罪すべきです。厚生労働大臣はこれまで、被害者との面談を拒絶してきました。原告の声を聞くべきです。(菅野尚夫)