2007年3月22日(木)「しんぶん赤旗」
石原知事肝いり 新銀行東京に消える?税金1000億円
金利14%「サラ金なみ」
設立推進 自・民・公の責任
都税1000億円が消えていく――。石原慎太郎東京都知事の肝いりで、巨額資金を投入して設立した新銀行東京が、浪費の現場になっています。このまま赤字を脱しなければ、遠からず同銀行の自己資本はゼロに。中小企業対策が口実でしたが、中小企業経営者の間では「役に立たない銀行」との声もあがっています。知事の経営責任が問われています。(本田祐典)
「サラ金と似たようなもの。これじゃあ、やってけないわ」
東京都渋谷区で飲食店を営む女性(58)の口調に怒りと後悔がにじみます。二〇〇五年七月、新銀行東京から五百万円の融資を受けました。当初、11%だった金利は月ごとに上がり、返済開始から三カ月で金利は14%台に。利息制限法の上限(元本百万円以上は15%)ぎりぎりの金利です。
行員「高いから」
「融資を受けた後、新銀行東京の人が『うちは高いから、借り換えたほうがいい』と言ったの。あぜんとしましたよ。どうしても急ぎの資金が必要で借りたけれど、いま考えれば失敗でした。どこが中小企業支援の銀行なの」
「もうあんなところは相手にしない」。都内で製造業の工場を経営する男性も語ります。
新銀行東京から、融資を持ちかける電話を受けました。ところが、二期分の決算書を持っていくと一目見るなり「赤字だから」とにべもなく断られたといいます。「ほかのところは、ちゃんと新しい設備への投資中という事情を考慮して融資してくれた。あの銀行はもうどうしようもないね」
新銀行東京は、石原知事の発案で「中小企業に総合的な支援を行う新銀行」を名目として設立され、〇五年四月に開業しました。都は一千億円をつぎ込み、株式の84%を保有しています。
新銀行の設立は、前回都知事選(〇三年)での石原知事の選挙公約でした。都議会では自民、民主、公明の各党が知事と一緒に設立を推進し、一千億円の出資を盛り込んだ〇四年度予算に賛成しました。
「東京発の金融革命はまた新たな一歩を踏み出す」(自民党三宅茂樹都議、〇五年三月三日)、「非常に力強い、そしてまた夢とロマンの持てるような銀行」(民主党中村明彦都議、〇四年九月三十日)、「中小企業の味方」(公明新聞、〇五年六月十二日付)などと賛美してきました。
累積赤字456億円
「経営状態は、計画からみると少し“ブレ”があります」。新銀行東京の広報担当者が説明します。「〇六年度の中間決算(九月まで)は経常損失が百五十四億円でした。目標と比べると五十四億円のマイナスです。設立にかかった費用や一期目の赤字を加えると、累積赤字は四百五十六億円になります」
本来の目的であるはずの中小企業への融資・保証も低迷。残高は目標の72%(千六百九十五億円)にとどまっています。融資・保証額全体の半分ほど(52%)です。
貸し出し全体も預金に対し49%と極めて低くなっています。一般的に健全な銀行の経営のためには七割以上が必要。さらに焦げつきも加わり、累積赤字は膨れ続けています。
石原知事の言動は、開業前から中小企業のための銀行をつくるとは思えないものでした。「お魚屋さんだか八百屋さんだか―。そんなところ貸さないよ。商店街つぶれつつあるんだから」(フジテレビ「報道2001」〇三年六月八日放送)。
知事の言葉を裏付けるように、開業後すぐに「五百万円を短期返済(二年)、金利9%」など、中小企業には厳しい条件の融資が相次ぎました。
「低利で余裕ある返済計画を」という東京商工団体連合会などの要請に、新銀行東京側は冷淡でした。「いやだったら、既存の金融機関に行けばいい。例えばフランス料理店で、ラーメンを注文されてもメニューがないのだから、ラーメンのあるお店に行っていただくしかない」(〇五年六月十七日)としています。
石原知事の経営責任が問われるなか、新銀行東京は知事の税金飲食でも話題になりました。〇五年四月十八日、石原知事の接待相手は、新銀行東京の仁司泰正代表執行役ら九人。一晩の酒宴に三十七万円の税金が使われました。
業者支援は縮小
石原都政は、中小企業が切実に願っている対策は切り捨てる一方です(グラフ)。その中では、都の中小企業対策の中心的役割を果たしていた商工指導所のようなものまで廃止しています。都の中小企業対策予算は、石原知事になって以降、三千三百四十一億円から、制度融資の預託原資を中心に三割以上も減らされています。
今日告示の都知事選では、石原知事が主導した“逆立ち政治”の失政が問われています。
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