2007年3月21日(水)「しんぶん赤旗」

主張

医師「偏在」論

患者も勤務医も命が危ない


 地方でも都市でも、医師不足が重大な社会問題となっています。日本共産党国会議員団の調査でも68・5%の病院が経営での一番の苦労として「医師不足」をあげています。

 日本共産党の小池晃政策委員長が、参院予算委員会で指摘したように、経済発展が進んだ世界の国々と比べ、日本の医師の数が不足していることは明らかです。人口十万人当たりの医師数は、OECD(経済協力開発機構、加盟三十カ国)平均の三百十人に比べ、日本は二百人で、約三分の二です。

絶対的な不足を認めよ

 「各県の中でも非常に厚いところと薄いところがある」と柳沢厚生労働相はいいますが、OECD平均に達する都道府県はどこもありません。人口十万人当たり医師数が最も多い東京都(二百六十四人)や徳島県(二百六十二人)でも、医師不足に悩まされている実態があります。

 三月十四日には、東京の民間病院に勤務する小児科医師の自殺(一九九九年八月)を労災と認める初の判決が、東京地裁でありました。小児科の管理責任者であるこの医師は、二人の医師の退職に直面し、当直医の調整と補充医師の確保に悩み、自らも月八回の宿直で過重な負担を強いられました。判決は、医師に心理的負担をもたらした要因に、「小児科医師が全国的に不足していたとの事情」をあげました。

 小池議員の「厚くいる都道府県とは一体何県ですか、言ってください」との質問に、厚労相が唯一あげた「徳島県」でも、医師不足が深刻になっています。公立の診療所の廃止がすすめられ、県南部から安心してお産のできる病院がなくなっています。県南部の中核病院である県立病院ではここ数年の間に医師数が半分に減り、小児科と産婦人科では常勤体制がとれず、徳島大学病院などからの派遣医に頼らざるをえない状況がつづいています。

 知事も出席する県総合計画審議会では、医師の確保を求める意見に県幹部が「産婦人科・小児科は勤務が過酷でリスクも高いために、希望する若いお医者さんが育ってこないという問題がある。これは徳島県だけでなく全国的な問題になっている」と答えています。

 医師数が“厚い”といわれる東京でも徳島でも、出ているのは深刻な医師不足の声であり、それは全国的な課題だと、口をそろえていっているのです。

 問われているのは、安心して医療を受けたいという住民と国民の声に応えて、医師不足の実態に真剣に向き合う姿勢です。

 「地域間・診療科による偏在」といって、医師不足を正面から認めようとしない政府が、率先して「偏在」をつくってきたことも重大です。産科・小児科不足のときだからこそ、公的病院が先頭にたって、妊娠・出産・小児の医療を守らなければならないのに、逆に国立病院や自治体病院を減らして、地域から産科を奪ってきました。

抜本的増員へ転換を

 一九七〇年には、人口当たりの医師数がほぼ国際的な水準に達していた日本が、ここ三十数年ほどの間に世界でも異常な医師不足の国になりました。政府が、医学部の入学定員を削減する方針をつづけてきたからです。日本の医師数の実態は「偏在」の問題ではなく、絶対的な不足からきているものです。社会保障に対する国の支出を抑える政策を根本から改めて、医師を抜本的に増員する方向に転換するよう求めます。



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