2007年3月19日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
自公 民主 どっちもどっち
住民に冷たい逆立ち県政
22日告示の知事選挙から始まるいっせい地方選挙。暮らし・福祉・教育予算を削って大企業誘致に補助金を惜しまない「逆立ち政治」が厳しく問われています。知事が民主党出身者でも自民党でも変わらぬ「逆立ち政治」を神奈川、岡山から報告します。
神奈川
温かい県政 かもい知事候補と県議躍進で
大企業18社に658億円を助成
正規雇用増大につながらず
松沢成文県政のもとで、神奈川県は、かつてないほど、暮らしにくさが深刻になっています。
各地の党議員団アンケートには「妻は介護度5、自分も脳梗塞(こうそく)があり介護は限界。特養ホームにいつ入れるのかわからない」「保育園をもっと増やしてください。共働きがしやすい環境をつくってくれないと、子どもが産めません」「体調がすぐれず働けないために国保料を支払えず資格証になった。病気の悪化がこわい」など、深刻な声が寄せられています。
また、県立高校十四校の廃校と定員枠の削減で、昨年の全日制高校への進学率は約90%と、全国最低水準に落ち込み、私学助成も全国最低水準のままです。
暮らしますます
松沢県政は、この暮らしにくさを改善するどころか、生活保護世帯への県単独上乗せ措置(小中学校の修学旅行支度金や中学卒業生の祝い金など)を廃止し、小児医療費無料化制度に自己負担金の導入や県立高校をさらに十一校削減しようとしています。
その一方で、企業誘致のためと称した「インベスト神奈川」という制度をつくり、大企業に大盤振る舞いしようとしています。
この制度は、県内に企業が本社・工場を建設した場合は五十億円、研究所の場合は八十億円を上限として助成するもので、助成額は十年間で総額六百九十八億円を決めています。
内部留保18兆円
助成金の交付が認定された企業は四十五社。日産自動車、武田薬品、富士フイルム、リコー、ソニー、キヤノンなどの大企業が十八社で、助成額は六百五十八億円と総額の94%をしめています。これら十八社の大企業の内部留保は約十八兆円と史上空前の利益をあげています。
とくに年間五千億円の利益をあげている日産自動車の場合、県が百十六億円、横浜市と厚木市の支援を入れれば百八十五億円もの助成を受けることになります。
民主党国会議員だった松沢知事を後押しするのは、民主党はもちろん、知事提案にことごとく賛成してきた自民・公明などの会派です。
日本共産党県議団(河野幸司団長、四人)は、「インベスト神奈川」で企業を誘致できたという知事にたいし、もともと県内に進出予定があったことや大規模なリストラで従業員を削減している事実などを示し(表参照)、地域経済の活性化や正規雇用の増大にならない大企業への税金投入の中止を要求しました。
暮らしの問題では、安易な国保証取り上げをやめるよう要求し、県が市町村を指導することを約束させました。また、毎年、私学助成の拡充を求める、六十―九十万県民が提出する請願の採択を主張するとともに、県議会でも繰り返し要求し、私学助成を増額させるなど、県民運動と共同し、切実な願い実現に取り組んでいます。
全県の党と後援会は、知事選では、「民主県政をつくる会」が擁立し、日本共産党が推薦する、かもい洋子さんの当選と県議選での大躍進で、県民の福祉・教育・暮らしを支える県政に切り替えようと大奮闘しています。(神奈川県 藤井悦雄通信員)
|
岡山
党3県議候補 福祉の心県政に
大企業1社に70億円を補助
難病や国保補助千項目カットへ
「一〇〇〇項目の福祉・暮らしの事業を廃止・削減し、大企業一社に七十億円も補助」「県政にないのは『お金で』なく『福祉の心』です」―。岡山県議選に日本共産党が立候補する三選挙区で、全戸に配布している政策ビラが反響を呼んでいます。
「その通りじゃ。いままで入れたことはないけど、今回は共産党に入れる」。配り始めるとさっそく、党の事務所に電話がありました。
石井正弘知事が二〇〇五年につくった「大規模工場立地補助金」制度は、誘致大企業に上限七十億円(設備費五十億、土地代二十億円)を補助するもの。さらに今年に入り、市町村営の産業団地に誘致した場合にも、県が上限五十億円を補助する制度に枠を広げました。
一方で県は、二〇〇七年度予算案で、県民の暮しにかかわる千項目以上の事業の廃止・削減を打ち出しています。保健福祉分野だけでも二百二十九事業におよび、難病の特定疾患や人工透析の患者(年九千円)、心臓病の児童(年一万円)への医療付帯療養費や、市町村国民健康保険会計への補助(加入者一人あたり年間六十九円)も廃止しようとしています。
知事あおる民主
福祉を切り捨て、大企業には大盤振る舞いの県政を支えるのは自民、公明、民主・県民クラブの「オール与党」です。知事提案に100%賛成してきた民主・県民クラブは、大企業誘致について「大型の助成制度を組んでいますが、いまだ宝のもちぐされ」とのべ、誘致競争で「成果を目指し勝負する価値はある」(昨年二月議会)と知事に推進を求めました。
日本共産党の武田英夫、赤坂てる子、森脇ひさきの三県議は「『福祉の心を』いまこそ県政へ。命と暮らしのお金は削り、誘致大企業には七十億円を準備する県政を力を合わせて変えましょう」と訴えています。
党岡山地区委員会は「岡山市は国保料の値上げをやめ、払える保険料に」「県は補助金廃止を中止し、増額を」と、署名への協力を呼びかけています。
政策ビラとともに全戸に配布した署名用紙を返送してきた女性(65)は「国保料があまりに高くて払えません。病院と薬代で月に二万円かかり、何のための保険か分かりません」とアンケートに声を寄せています。
廃止すべきは
「大企業一社に七十億円なんて、とんでもない」と話すのは党平井支部(岡山市)の中下晴美さん(55)。百七十人の署名を集めてきました。「いつもビラと署名用紙、ボールペンを持ち歩いて、会う人ごとにお願いしているんです。みんな協力してくれ、『年金は二カ月で四万円で、病院代を払ったら無くなる。国保料を下げてもらわないとね』という人もいる。廃止せんといけんのは大企業への補助金。困っている人に回してほしい」と。
武田県議は六日の県議会で、大企業誘致補助金について「県の経済発展と地域振興の大道は、中小企業と農林水産業の振興が基本。『大企業誘致合戦』に乗らない道を選ぶべきだ」と知事に問いました。「国保への補助金廃止を撤回し、逆に増額を」と求め、県は「助成について、どういう形が望ましいか検討の対象になる」と答えました。(岡山県・宮木義治)