2007年3月19日(月)「しんぶん赤旗」

主張

プロ野球裏金

組織全体の改革で出直せ


 プロ野球のスカウト活動でまたもや裏金が発覚し、球界を揺るがせています。西武球団がアマチュア選手二人に計千三百万円を渡していたのです。二〇〇四年には東京六大学投手への金銭供与がわかり、三球団のオーナーが辞任しています。球界は不正根絶を誓って翌年、いっさいの裏金を禁じた「倫理行動宣言」を定めていました。

発覚し口止めまで

 今回の西武の悪質性は、みずからも加わった「宣言」以降も不正を続けていたこと、それが発覚してからも当該選手に口止めを指示して隠ぺい工作をはかったことにあります。うその上塗りは、この球団の救いがたい不誠実さを表しています。

 同時に、度重なる裏金の横行は、一球団にとどまらず、プロ野球組織自体が自浄能力を失っていることを改めて露呈しました。この際、徹底的にうみを出し、真相解明に努めなければ、もはやスポーツ組織として社会に顔向けができないでしょう。

 プロ野球におけるアマ選手争奪は古くて新しい問題です。そこが唯一の供給源だけに、各球団はあの手この手で有力新人の獲得に血道を上げてきました。ドラフト制度も、もともとは自由競争下での異常な札束攻勢が社会問題となり、アマとの関係も悪化したことから導入されたものです。この制度は選手の選択の自由をうばう矛盾を抱えながら、契約金の高騰を抑え、戦力均衡に一定の役割を果たしてきました。

 しかし、一九九三年に「逆指名」が認められてからは自由競争時代に逆戻りしたといわれます。「希望入団枠」に名を変えた現行ドラフトも各球団の思惑の産物として、いびつさを増した仕組みになっています。なぜ時を戻し、同じ過ちをくり返すのか。そこには、未来の展望や指針を持ち合わせていないプロ野球組織の最大の課題が表れています。

 選手やファンを置き去りにした〇四年の球団合併・再編騒動で、世論の批判を浴び、待ったなしの改革を迫られたプロ野球ですが、それから二年たっても、本格的な改革は遅々として進んでいません。それどころか、選手会労組と「構造改革」を話し合う場でも、球団側は先延ばしの態度に終始してきました。

 旗振り役であるはずのコミッショナーは不在で、合併激動期の無力ぶりでひんしゅくを買った人物が、いまだに代行として居座っています。球界ご意見番といわれる広岡達朗さんも、近著『野球再生』のなかで現状を嘆いています。「最高責任者の意思が見えてこないような組織は、組織ではない」「日本のプロ野球球団は一企業の所有物。天下り組のこの人たちは、常に会社の上司であるオーナーの顔色をうかがっている。『こんなことを提言したらしかられるのでは』と絶えず頭に置いているから、斬新な提案などあり得ない」

選手やファンの声聞いて

 いま、プロ野球をとりまく世界は様変わりしています。スター選手の大リーグ流出、ドル箱だった巨人戦のテレビ視聴率は平均一ケタ台に落ちこみ、野球人口も減っています。これまでの人気にあぐらをかいて安閑としている状況ではないのです。

 七十年以上の歴史をもつ日本のプロ野球は長い間、子どもたちに夢をあたえてきました。それがいま逆に青少年の将来を閉ざそうとしている深刻な事態を直視しなければ、球界に未来はありません。制度の改善はもちろん、選手会労組やファンの声に耳を傾けながら、一刻も早く組織改革に手をつけるべきです。


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