2007年3月18日(日)「しんぶん赤旗」

「逆立ち」誰が正す

くらし削って巨大開発

都知事選 最大争点は税金の使い方


 石原都政二期八年が問われる東京都知事選(二十二日告示、四月八日投票)。「都民の福祉とくらしを切り捨て、巨大開発に税金を注ぎ込む『逆立ち』都政を極端までにひどくした罪」「憲法と民主主義を破壊する暴政を進めた罪」「都政私物化の罪」――日本共産党の志位和夫委員長は十日の東京演説会で、石原都政とそれを支えた自民、民主、公明など「オール与党」の“三つの大罪”を告発し、その審判を呼びかけました。なかでも最大の争点は、「逆立ち」都政をどうただすのか、ただせるのはだれなのか、です。


石原氏 福祉・保健費450億円減らし…

 「何が贅沢(ぜいたく)かといえば、まず福祉」(『文芸春秋』一九九九年七月号)。石原知事はこういって、都知事に就任してすぐに福祉切り捨てを始めました。高齢者の医療費助成や老人福祉手当を段階的に廃止し、シルバーパスは全面有料化、障害者の医療費助成を切り下げ、私立保育園への運営費補助は大幅に削減するなど革新都政時代に都民が築き、その後の自民党都政、青島都政のもとでも守られた福祉施策に大なたをふるったのです。

 さらに、特別養護老人ホームや老健施設などの介護基盤整備は後回しにし、都立母子保健院の廃止をはじめとする都立病院の統廃合を進めました。果ては、わずか年間六十四万円の障害者への盲導犬のえさ代補助も廃止するなど、情け容赦ありません。

 その結果、「福祉と保健」費は一九九九年度と二〇〇五年度の決算比で四百五十億円も減りました。老人福祉費は、全国二位から三十二位にまで転落し、百五十を超える都立施設が廃止されました。

 福祉を削って税金を注ぎ込んだのは、巨大開発でした。年間一兆円、バブル経済前の水準の二倍もの資金を大型公共事業を中心とする投資につぎ込みました。破たんが明らかな臨海開発に投入された税金と都民の財産は八年間で二兆円を超えます。本来、都が負担する必要のない高速道路の建設に、新たに都民の税金を一千億円も投入しようとしています。

 さらに、オリンピック招致をてこに八兆五千億円規模の巨大開発を計画。五輪の基盤整備のために毎年一千億円を積み立てるなど、「逆立ち」都政をいっそうひどくしています。

支えた自・公・民

 このゆがんだ「逆立ち」都政を、「(福祉・都民施策切り捨ての都の『財政再建推進プラン』について)時には都民のみなさまに痛みを分かち合っていただく」(自民党、〇三年十月)「老人福祉手当という現金給付制度は、寝たきりを助長する」(民主党、〇三年三月)「(石原都政の福祉改革について)わが党の提案を都は全面的に受け入れた」(公明党、〇一年二月)といって、支え、推進してきたのが、自民、民主、公明などの「オール与党」です。

 ところが、民主党は、都知事選が近づくなか、にわかに「野党ポーズ」を強め、〇七年度は一般会計予算にも初めて反対。二月の都議会では、石原知事から「ならば、今までなぜ都が提案した提案に、民主党はすべて賛成をしてこられたのか」と切り返され、一言もいえないありさまです。


吉田さん むだなホテルやめた実績

 石原都政と「オール与党」が一体で進めてきた「逆立ち」都政を、都民本位の都政に転換できるのは、政党では日本共産党、候補では、この党と無党派が共同で推す吉田万三さんだけです。

 日本共産党は、毎年の予算議会で予算組み替え案を提出し、都財政の数%の予算を組み替えれば、福祉、教育、中小企業支援、環境など、都民の願いを実現できると建設的提案をしてきました。石原知事も都議会で「(民主党が)予算を今度は否決(反対)するようだ。それなら対案として、共産党のように組み替え動議をだすべきだ」というほどです。

 「大型開発を優先するのではなく、くらしの安心を基本にすえるものに都政の構造を変えることが必要だ」。四人の都知事候補が出席して十五日に開かれた公開討論で、「逆立ち」都政の転換を主張したのは、吉田候補ただ一人でした。

 吉田候補には、「逆立ち」政治を変える“実績”があります。足立区長時代、自民・公明区政が進めた無駄遣いのホテル誘致計画を公約通り撤回し、税金の使い方を大型事業中心から、くらし第一に切り替えたのです(表参照)。

「業者の命綱だ」

 わずか二年八カ月の期間でしたが、子ども医療費無料化の拡大や特別養護老人ホームの三カ所同時建設、不況対策融資の拡充など区政は見違えるように変わりました。「子育てするなら足立区で」「『万三融資』は業者の命綱だ」など、その実績は、後々まで語りぐさになるほどでした。

 吉田候補が提案した「都政改革プラン」には、足立区長時代の経験が生きています。オリンピック計画は白紙に戻し、五輪招致のための積み立て年一千億円があれば、高齢者の医療費一割助成や月額一万円の介護手当、特別養護老人ホームの年間建設数の三倍化、中学三年生までの医療費無料化などはすぐにできると提案しています(一覧参照)。

足立区長時代の実績(1996〜99年)

■ムダな大型事業ストップ

 ・前の区長が進めたホテル誘致計画を撤回

 ・新たな借金額を半分以下におさえる

 ・公共事業全体を圧縮しながら、くらし密着の事業で地元業者への発注を増やす

■福祉・くらしを第一に

 ・民間のホームヘルプ養成を2倍に増やし、24時間介護を区内全域に広げる

 ・子どもの医療費無料化対象を「2歳まで」から「小学校入学前まで」に拡大

 ・特養ホーム建設を3カ所同時に進める

 ・中小企業支援の借りかえ融資を実施

オリンピックの積み立て(年1000億円)を活用すれば…≪万三プラン≫   

 【医療費】中3まで無料。65〜69歳1割助成  275億円

 【妊婦検診】無料化             100億円

 【認可保育所】新増設の用地費助成を創設   25億円

 【重度要介護高齢者】月1万円の手当     60億円

 【障害者自立支援法】利用者負担の軽減    20億円

 【シルバーパス】2万510円券を一部3000円に  40億円

 【特養ホーム】建設数3倍化         300億円

 【都営住宅】毎年1000戸の新規建設      55億円

 【商店街支援】新・元気を出せ!事業の拡充  40億円

 【青年】正規雇用の促進           23億円

 【生活困窮者】月1万円の緊急生活応援手当  60億円

                   (合計)998億円

※ほかにも、大型開発を見直して財源をつくり、30人学級や私学助成拡充、木造住宅の耐震補強工事への助成などの都民の願いを実現します。(いずれも都の年間予算として)


浅野氏 宮城県の借金倍加、要因は…

 民主党が支援する浅野史郎・前宮城県知事は三期十二年、石原都政と同じように、巨大開発を優先し、福祉・教育を切り捨てる「逆立ち」県政を進めてきました。まさに「絵に描いたようにうり二つ」(志位委員長)です。

 「(石原都政の)一期目はよかった。輝かしい業績をあげてきた」。浅野氏は、六日の出馬会見でこう述べました。

 では、一期目の石原都政はどうだったのか。石原知事は、就任後すぐに、シルバーパス全面有料化、寝たきり高齢者への老人福祉手当の廃止、乳幼児や障害者への医療費助成に一部負担導入など、それまで都民のくらしを守ってきた福祉施策の切り捨てに踏み出しました。

 浅野県政が進めた福祉切り捨てと比較してみると――。敬老祝い金の廃止、寝たきり高齢者への介護手当の県費支給打ち切り、乳幼児・心身障害者・母子家庭の入院給食費の補助打ち切りなど、似たような項目がズラリ(表)。

 石原都政の一期目を「輝かしい業績」と評価するはずです。石原都政と浅野県政は同じ流れにあるからです。

巨大開発を推進

 障害が重いほど負担が重くなる「障害者自立支援法」への態度でも似たもの同士です。石原知事は「自立支援法の改革の理念は、これまでも都が全国に先駆けて実施してきた、利用者本位の新しい福祉を目指す福祉改革の考え方や取り組みと合致するもの」と評価。浅野氏は「自立支援法が目指す方向に間違いはない。…障害者の自立、地域生活の支援という方向を明確に示したことは、高く評価している」と述べています。

 大型開発に湯水のように税金をつぎこむ点でも、石原都政と浅野県政は共通しています。

 石原知事は、採算の見通しがたたず「行くも地獄、退くも地獄なんだ」と自ら認めた「臨海」開発に税金を垂れ流してきました。超高層ビル中心の「都市再生」などの大型開発を中心に毎年一兆円規模の投資をおこない、オリンピック招致をてこに、八兆円以上の投資計画も進めています。その一方、都営住宅の新規建設を中止するなど生活密着型公共事業は大幅に減らしています。

 これにたいして浅野氏は、東京での公共事業のあり方について記者会見で聞かれ、「まず、無駄な公共事業というのはないんです。やれば必ず役に立っている。…宮城県でも同じことをやってきましたが、それはみんな必要なもの」と答えました。

 実際、宮城県知事時代には、大型船がほとんどこない大型港湾建設計画を進めたり、過大な需要予測にもとづいて仙台空港アクセス鉄道の事業を進めてきました。その一方、学校改修など、生活密着型の公共事業は先送りされました。

開き直りの態度

 浅野氏は、県知事時代の十二年で県の借金を二倍に増やしました。その要因について、当時の国策の景気対策に協力して公共事業につぎこんだことだと認めたうえで、「財政的な身の丈をこえてやった。私の失政なんでしょうか」と開き直る態度もみせました。

 財政難を理由に福祉を切り捨てながら、巨大開発には執着する――この点でも、両者はそっくりです。

 宮城県で「逆立ち」県政を進めてきた浅野氏が、「逆立ち」都政を石原都知事と一緒に進めてきた民主党の支援をうけて、どうして都政改革などできるでしょうか。

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