2007年3月18日(日)「しんぶん赤旗」

主張

臨界事故隠し

不正の根を絶つ徹底究明を


 北陸電力が、志賀(しか)原発1号機(石川県)で一九九九年の定期検査中におきた臨界事故を隠していたことが明らかになりました。試験操作のミスで核反応が継続する臨界状態となったのに、安全装置が作動せず、約十五分にわたって原子炉の運転が制御できなくなっていたのです。

 試験中の操作ミスなどで原子炉が暴走し過酷事故に至った八六年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故を想起させます。

 北陸電力はこの重大事故を組織ぐるみで隠していたのですから、言語道断です。

企業体質に抜本的メスを

 事故隠しは、発電所長ら幹部の協議で決定されました。公表して地元の“信頼”を損ないたくないとの判断があったとも報じられています。事故の二カ月後には、志賀町などが2号機増設を受け入れています。2号機の増設をすすめるために事故を隠したとすれば、きわめて悪質です。

 事故の三カ月後には、JCO核燃料加工工場で臨界事故が起こり、二人の死者を出しました。二〇〇二年には東京電力の原発損傷隠しが発覚し、〇四年の関西電力美浜原発の事故では五人が亡くなりました。

 こうした事故で電力会社の安全軽視、隠ぺい体質が厳しく批判されていた時期にも、あえて隠し続けてきたことは重大です。その動機と責任が問われなければなりません。

 志賀町助役は、「信頼を踏みにじる非常に悪質なもの」「企業体質に疑問を持つ」との談話を出しました。北陸電力は、事故の原因、隠ぺいの動機と経過、責任の所在を明らかにすべきです。同時に、企業体質に抜本的なメスを入れ、不正の根を絶つためには、当事者任せでなく、第三者による徹底した調査で全容を究明する必要があります。

 事故は、制御棒の駆動試験の際に起こりました。操作ミス等により八十九本の制御棒のうち三本が抜けて、臨界状態になりました。警報が鳴り自動停止信号が出されたものの、緊急時に制御棒を自動挿入する装置は止められていました。原子炉のふたもはずされたままでした。

 原発の緊急時安全対策は、原子炉を止める、冷やす、放射能を閉じ込める、の三つです。このうち二つがほとんど欠けた状態で、制御棒を操作するという試験が行われていたのです。

 事故隠しがこれにとどまる保証はありません。昨年来の一連の不正発覚で明らかになったように、不正はすべての電力会社にまん延していました。全国すべての原発について実態を明らかにする必要があります。

 安倍晋三首相や甘利明経済産業大臣は、「隠ぺいは許せない」「憤りすら感じる」と非難しています。しかし、事故が起きたのは、真夜中とはいえ、国による定期検査の最中です。中央制御室で警報が鳴り響くような事故なのに、電力会社から報告があるまで把握できずにきたのが、原子力規制行政の実態です。

 事故と隠ぺいを見過ごしてきた国の責任こそが、厳しく問われているのです。

規制行政の根本的見直し

 原子力規制行政のあり方を根本的に見直すことは急務です。アメリカでは、エネルギー省とは独立に原子力規制委員会を設け、日本の十倍近い職員で原子力規制行政を担っています。

 日本でも、原発推進の経済産業省から独立し、現場の実態をしっかり把握できる十分な体制をもった規制機関を確立しなければなりません。


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