2007年3月17日(土)「しんぶん赤旗」
中国人強制連行・西松建設訴訟
最高裁 請求権放棄で弁論
第二次大戦中に強制連行され、広島県内の水力発電所建設工事で過酷な労働を強いられたとして、中国人の被害者と遺族計五人が西松建設に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は十六日、「請求権放棄」の争点に限って弁論を開きました。
原告二人が来日し、陳述。強制労働中に事故で両目を失明した宋継堯さん(79)は、「ずっと地獄のような生活だった。歴史を正しく認識して公正な判決を求める」とのべ、邵義誠さん(81)は「どのように解釈すれば中国人に賠償請求権がないとなるのでしょうか」と訴えました。中国人が最高裁で陳述するのは初めて。判決は四月二十七日。
最高裁が争点にしたのは、一九五二年の日華平和条約と七二年の日中共同声明で中国人個人の損害賠償請求権が放棄されたかどうかです。
原告側弁護団は、日華平和条約が台湾と一部の地域を適用範囲として結ばれたものであると指摘し、その事実を「無視して請求権が放棄されたと考えることは到底不可能」だと強調。日中共同声明については、中国政府が日本政府に対し「『戦争賠償』を放棄したにとどま」り、被害者個人の「『被害賠償』まで放棄したものではないことは文言上明らかである」とのべました。
原告側が逆転勝訴した二〇〇四年七月の広島高裁判決は、個人の請求権を認めています。
最高裁が個人の請求権は放棄されたと判断すれば、従軍「慰安婦」訴訟など、すべての中国人の戦後補償裁判に大きな影響を与えることになります。