2007年3月13日(火)「しんぶん赤旗」
愛国者法を乱用
FBI、違法に情報収集
米司法省が報告
【ワシントン=山崎伸治】米連邦捜査局(FBI)が内規に反した個人情報収集を行っていたことが、九日に公表された司法省監査総監の報告書で明らかになりました。二〇〇一年九月の同時多発テロを受けて制定された米愛国者法で「テロ対策」を口実にした情報収集に関する法的手続きが簡略化されたことが背景にあり、米主要紙も「権力の乱用」(ワシントン・ポスト)と批判しています。
FBIが銀行口座の記録、電話やインターネットの通信記録など民間企業が管理する個人情報を押収するには従来、裁判所の令状が必要でした。ところが愛国者法で、他国のスパイやテロリストにかかわる情報であれば、令状がなくても、FBIが発行する「国家安全保障書簡」(NSL)にもとづいて押収できるようになっています。その結果、NSLの発行は二〇〇〇年の八千五百件から、〇五年には四万七千件に急増しています。
報告書はそのうち、約三百件のNSLを取り出して調査。その結果、二十六件について、承認されていない捜査のために発行されたり、内容が不備のまま発行されたりしていたと認定しました。
これらについて、司法省やFBIの内規に触れるとしていますが、意図的ではないとし、法律違反については“可能性がある”とするにとどめています。
FBIのモラー長官は九日の会見で「責任を負っているのは私だ」と表明。ブッシュ大統領は十日、訪問先のウルグアイで「私はFBI長官も、司法長官も信頼している」と述べ、責任は問わない考えを表明しました。
これに対し、愛国者法による人権侵害を告発してきた全米市民的自由連合(ACLU)のロメロ事務局長は、FBI長官も司法長官も責任を免れないことを指摘。「議会は速やかに、こうした愛国者法の危険な条項を削除するよう対処しなければならない」と表明しました。