2007年3月13日(火)「しんぶん赤旗」

安倍内閣

「戦後レジーム脱却」で
政権立て直し図るが


 首都圏一都三県で毎週木曜日に六十万部発行される無料誌『R25』(アールニジュウゴ)。現在配布中の三月第三週号は「安倍さんが演説でよく使う『戦後レジームからの脱却』ってどういう意味なんですか?」との記事を載せています。

 記事は、安倍政権が発足以来取り組む教育基本法改定、防衛庁の「省昇格」をはじめ「いまの通常国会で憲法改正のための手続法である国民投票法案の成立に意欲を示しているのも、すべて戦後レジームからの脱却というわけ」と解説しています。

 そのうえで国民の政治への期待との兼ね合いに触れ「安倍内閣の支持率低下のおもな原因は、閣僚の不祥事に加え、安倍さんの政策優先順位と国民みんなの期待にズレがあるから」と分析。「格差是正などの生活の問題か、それとも自分の政治的理想か。いま安倍さんが問われているのはそこかもしれない」と結んでいます。

 安倍内閣にとって支持率回復の道は、格差是正など国民の生活と労働の底上げをはかる政策路線への転換という選択しかない、ということになります。

ギアの切り替え

 しかし、安倍内閣が「戦後レジームからの脱却」路線から“脱却”するような兆しは見えません。むしろ安倍「戦後レジーム脱却」路線を突っ走る強気の構えにギア(歯車)を切り替えています。

 自民党が改憲手続き法案で法案採決の前提となる公聴会開催を決める衆院憲法調査特別委員会の開会を強行しようとしたことは安倍首相の意向が反映した行動でした。「従軍慰安婦」問題、南京事件問題で自民党が検討機関を設け、従来の政府見解を覆す環境づくりに動いているのも「安倍首相が側近を通じ党側から声をあげさせている。いうなれば首相のマッチポンプです」(自民党衆院議員)。

 思想的に安倍首相の兄貴分とされる衛藤晟一前衆院議員(郵政「造反」組で離党)を首相のツルの一声で復党をさせたのも、一連の安倍“純化”路線の一環と自民党内で受け取られています。

 もともと改憲・先軍(軍事優先)のタカ派路線が政治家・安倍氏の“売り”でした。しかし高支持率を維持した小泉政権を引き継ぐ政権として、国民が期待しない改憲・先軍政治を前面に押し立てるのは得策でないとの思惑から、「ハト派安倍」イメージを先行させてきました。

 昨年の首相就任後初の臨時国会で、侵略的行為を認めた戦後五十年の「村山談話」、旧日本軍の関与を認めた「従軍慰安婦」にかんする「河野談話」の立場を、持論を翻して継承すると答弁したものでした。

 しかし内閣支持率はジリ貧。本来の安倍路線を打ち出して政権基盤の再構築を、と打ち出されたのが“政治家・安倍の原点回帰”=戦後レジーム脱却路線の全面展開作戦です。

はやる「安倍状況」

 安倍首相と内閣―党の間で二人三脚を組む中川昭一政調会長は最近の講演で安倍内閣が取り組む三本柱=教育(教基法改悪体制の全面化)、安全保障(集団的自衛権行使容認)、憲法(九条改悪)=を強調し、この点で「首相はずいぶん自分のことばで話しはじめた」(七日、東京都内の講演)といっています。

 しかし、安倍首相の党内求心力の低下と政権体制の弱体化、党執行部との不協和音、止まらぬ世論の安倍離れ…。

 「自民党で“安倍状況”ということばがはやっている。機能不全、機能がまひしているという意味。要するに心臓(晋三)まひ状態だということだよ」(自民党議員)

 改憲タカ派路線をむき出しにして、それをカンフル剤に政権浮上を託す危険な安倍戦略が実を結ぶ保証はありません。


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