2007年3月11日(日)「しんぶん赤旗」
主張
日興粉飾決算
こんな金融市場にだれがした
決算を粉飾した日興コーディアルグループ株式の上場廃止について、東京証券取引所が週明けにも結論を出すと報道されています。
日興の決算の訂正報告によると、粉飾の規模は二〇〇四、〇五年度の二年間で四百十八億円に上ります。
証券市場の支え手が
証券市場と投資家、株式会社を結ぶ証券会社は市場の主要な支え手です。しかも日興は、かつて「四大証券」に列した大手で、現在も業界三位の位置を占めています。
日興側の監査委員から会計処理に疑問が出ていたにもかかわらず、日興の決算を「適正」と認めたのは日本最大手の旧中央青山(現みすず)監査法人です。カネボウなど数々の粉飾決算にかかわってきた中央青山は、今回の事件で解散に追い込まれつつあります。
市場の支え手である証券会社が決算を粉飾し、それを市場のゲートキーパー(門番)である監査法人がやすやすと見逃しました。市場そのものへの不信を大きく増幅させる極めて深刻な事件です。
日興が粉飾に利用したのは、「貯蓄から投資へ」を看板にした規制緩和の産物であるEB債(他社株転換債)や、ライブドア事件の投資組合に類似したSPC(特別目的会社)と呼ばれる事業体です。
EB債は、特定企業の株価に連動して償還条件が変わる債券で、株価が基準値より上がれば高い利益が得られ、下がれば元本割れする危険がある金融派生商品です。一九九八年の「金融システム改革法」で発行できるようになりました。
日興の投資部門が、自ら設立したSPCに発行させたEB債を取得し、EB債に連動する株式の公開買い付けを実施して株価を上昇させ、EB債の評価益をつり上げました。評価益をさらに水増しするために、EB債の発効日を、実際の発行の日から一カ月以上さかのぼらせるという意図的な操作もやっています。
一連の操作で、EB債を発行したSPCには同額の損失が出るため、日興はSPCを連結決算からはずして投資部門の評価益だけを計上しました。身内同士のやりとりで何の利益も生まない取引から、巨額の利益をつくりだす「錬金術」です。
日興は「錬金術」の道具立てとして、株式公開買い付けの際に、大企業のリストラを応援する「改正産業再生法」も「活用」しています。
マネーゲームをあおる規制緩和万能路線と、大企業応援の経済政策がどれほど経済と市場をゆがめてきたか、政府・与党は根本から反省する必要があります。「金融システム改革法」「改正産業再生法」には、自民党、公明党だけでなく民主党も賛成しました。「構造改革」を競い合ってきた責任は重大です。
粉飾と利益至上の合体
日興は米金融最大手のシティグループの子会社として生き残る方針を発表しました。シティは世界各地で不祥事を起こしています。日本でも以前、預金を装って投機商品を販売したり、粉飾決算への加担や顧客情報紛失など不祥事が相次ぎ、金融庁が処分しています。金融庁も「収益獲得に偏重」と指摘したほどです。
粉飾決算の大手証券と利益至上の巨大金融グループの合体です。
シティの狙いは団塊世代の退職金だといわれています。日本の金融市場と国民の金融資産をこれ以上危険にさらさないよう、規制緩和の弊害を踏まえて現在の金融行政を改め、事前規制も含めた総合的な規制の体制に転換するよう求めます。