2007年3月7日(水)「しんぶん赤旗」

主張

国保証とりあげ

命の痛みを感じる心がない


 安倍首相には、国民健康保険証をとりあげられて、医者にもいけず、命を落とした人々の痛み、悲しみを感じる心がないのでしょうか。医師不足の実態に心をよせることはないのでしょうか。

保険証とりあげやめよ

 四千七百万人の国民が加入する市町村の国民健康保険が、土台を掘り崩すような危機におちいっています。保険料が高すぎて払えない人に、窓口で十割負担を強いる「資格証明書」を発行する非情な仕打ちが各地で増えています。全国各地の医師不足は、病院や診療科の閉鎖という事態を招き、住民・患者の命と健康を脅かしています。

 その深刻な影響と国の責任を、日本共産党の小池晃参院議員が、参院予算委員会でとりあげました。

 国保証をとりあげられ、受診が遅れて重症化した事例が過去三年間に九百三十件(国会議員団のアンケート調査、六百病院回答)、命を落とした人が過去二年間に二十五人(全日本民主医療機関連合会のまとめ)もいるのです。

 気管支ぜんそくの発作を繰り返す三十二歳の男性は、売薬ですませるうちに夜間に激しい発作で病院に搬送された翌日に死亡―。こんな実態をつきつけられても、安倍首相は、「突然保険証をとりあげることはない」とのべました。持病で最初に病院にいったときが命を落とすときとなった人々の苦痛に向き合おうとはしませんでした。

 保険証の取り上げの最大の要因は、国の政治にあります。一九九七年に政府が国民健康保険法を改悪し「資格証」交付を市町村の義務としたことが、貧困で苦しむ人から医療を奪い取る非道な政治を一挙に拡大させたのです。国保改悪後に、「資格証」世帯は三・六倍になり、昨年六月時点で三十五万世帯を超えました。

 首相は、「特別な事情のある人」からは保険証をとりあげることはしないといいました。実際は、保険証のとりあげは乳幼児医療費助成対象の子どもや小中学生、気管支ぜんそくで公費医療の助成を受けて通院している小学生にも及んでいます。

 政府がやっているのは、ただただ切り捨てるだけの政治です。資格証の増加とともに保険料滞納者は増加しています。保険証取り上げは、滞納を減らす効果はまったくありません。

 四百八十万世帯を超える国保料滞納を生み出しているのは、支払い能力をはるかに超える保険料水準にあるのです。年収二百八十万円の四人家族の自営業の人の国保料が年間四十五万円、介護保険料や国民年金保険料を支払えば手元に残るのは百八十九万円―。大阪市の実例をあげて、国保の保険料がワーキングプアをつくっていると小池議員は告発しました。これには、「初めて拝見した」(安倍首相)「いきなりいわれても計算ができない」(柳沢厚生労働相)と、政府自身が驚き、「払える水準」だといえませんでした。安倍首相は「どういう経過で未納にいたったかよくみなければならない」とのべてごまかすのではなく、高すぎる保険料の水準を直視し、保険証の取り上げは中止する必要があります。

国の責任を果たせ

 産科不足にたいしても、首相は、医師の厳しい勤務実態は認めながらも、国が率先して国立病院を切り捨て、医師養成を抑制してきた基本政策への反省はありませんでした。

 国民が安心して医療を受けられるよう、国が自らの責任を果たすよう求めます。


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