2007年3月5日(月)「しんぶん赤旗」

主張

放射性廃棄物処分場

立地調査を金で押し付けるな


 政府は、原発の使用済み燃料の再処理でできた高レベル放射性廃棄物の最終処分場を決めるため、高知県東洋町での文献調査(立地調査の第一段階)を三月にも開始しようとしています。

 東洋町には多額の交付金が入りますが、「金と引き換えの放射能はいらない!」という住民の声が広がっています。有権者の五割近くが、放射性廃棄物の持ち込みや処分施設の建設、調査を禁止する条例の制定を求めて直接請求を出しました。

 政府による立地調査は、こうした住民の声を踏みにじるものです。

安全な処分方法は未確立

 高レベル放射性廃棄物の安全な処分方法は、まだ確立されていません。にもかかわらず政府・電力会社は原発を増設し、英仏に委託して使用済み燃料の再処理を進めてきました。無謀な政策のツケである高レベル放射性廃棄物を、自治体と住民に押し付けることは許されません。

 高レベル放射性廃棄物は、非常に放射能が強く、製造直後では、二十秒で致死量の放射線をあびてしまうほど危険なものです。しかも、数千年から数百万年という長い半減期の放射能も含まれています。これを地下深くに埋めてしまうというのが最終処分場ですが、長期にわたる安全確保には、科学的にも技術的にも裏づけがありません。

 安全に処分できる安定した地層が地震列島日本にあるのかも、専門家から疑問視されています。処分用の容器の耐用年数は千年であり、放射能が地下水や地殻変動を通じて人間の生活環境に漏出する可能性があります。住民の強い反対は当然です。

 ところが、東洋町長は一月、町民の六割以上の反対署名と議会の反対を無視して、独断で立地調査に応募しました。「東洋町の自然を愛する会」が呼びかけた抗議集会には約三百人が集まり、「核廃棄物の冒険的事業を永久に拒絶」するよう求めました。町議会も、応募反対と放射性廃棄物の持ち込み永久禁止、町長の辞職勧告を決議しました。

 周辺市町村の議会と市町村長、高知県と徳島県の議会と知事も立地調査に反対しています。

 政府が立地調査を断念するよう求めます。特定放射性廃棄物最終処分法でも、文献調査から先にすすめるには、市町村長だけでなく知事の意見を尊重することを義務付けています。これとの整合性もありません。

 東洋町長は、住民の安全を守るという自治体の責務を果たし、調査応募を撤回すべきです。

 町長が調査に応じたのは、応募すれば年間約二億円という国の交付金が得られるからです。政府は、この交付金を来年度から年間十億円に引き上げて、第二、第三の応募を誘い出そうとしています。

 地方交付税の削減などで自治体を財政難に追い込む一方で、札束でほおをたたいて自治体を国の方針に従わせようという、許しがたいものです。こうした制度をやめ、地方交付税の財源保障・調整機能を強化するなど、自治体の健全な財政を保障することが急務です。

再処理計画の中止を

 高レベル放射性廃棄物は、信頼できる処理・処分方法が確立されるまで、厳格な管理のもとで安全に保管し、政府は安全な処理・処分方法の研究開発に力をいれる必要があります。

 年内操業予定の再処理工場(青森県六ケ所村)は、いたずらに高レベル放射性廃棄物を増やすものであり、計画の中止を強く求めます。


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