2007年3月3日(土)「しんぶん赤旗」
不祥事続く予備校会社LEC
都の4事業落札
市場化テストで参入
「ふさわしくない」の声も
国内初の株式会社大学などの教育事業をめぐり、文部科学省などから繰り返し処分や指導を受けている資格試験予備校運営会社、東京リーガルマインド(LEC、東京都千代田区)が昨年末、東京都の教育関連事業の官民競争入札に参加し、七事業のうち四事業を落札しました。不祥事が続く同社の参入に「ふさわしくない」と批判が出ています。
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「公共サービスの質の向上とコストの縮減を図るため…『官民競争入札』を実施し、事業の実施予定者を決定しました」
昨年十二月十八日、東京都の産業労働局など三部局がこう発表しました。入札の対象となったのは都立技術専門校での職業訓練事業。求職者向けの授業などを担当します。「官から民へ」をスローガンに導入された「市場化テスト」の東京版モデル事業です。
「貿易実務」や「ビジネス経理」など七つの科目のうち、四つを落札したのがLECでした。都産業労働局の担当者は「事業提案の質と価格を総合的に評価し選んだ」としています。
初の改善勧告
LECと関連会社は近年、大学をはじめ保育園、学童保育、自治体で若者の就職支援や実務研修を行う「ジョブカフェ」などさまざまな教育関連事業に進出しています。
事業拡大と同時に、LECは各分野で次々と不祥事を起こしています。
筆頭格は、同社が二〇〇四年に構造改革特区制度を利用し、設立した初の株式会社経営大学「LEC東京リーガルマインド大学」です。特区初年度の特例として、三カ月間の審査で認可されました。
〇六年三月、同大の学生と同社の予備校の生徒が混在する授業が多数あることなどから、LECは文科省から改善に向け指導を受けました。
今年一月には、多数の専任教員に勤務実態がないなど新たな法令違反が発覚し、文科省から学校教育法に基づく初の改善勧告を受けています。
ほかにも▽予備校受講生の司法試験合格者数を水増ししてパンフレットやホームページに掲載し、公正取引委員会が排除命令(〇五年二月)▽新潟県長岡市のジョブカフェで、国からの委託費を大学パンフ作製に不正に流用していたことが発覚(〇六年十一月)――などがあります。
合格者水増し問題では、LEC大の開設地である千代田区から厳重注意と一カ月の指名停止処分を受けました。
信頼を裏切る
この最中に決まった、東京都での職業訓練事業の落札。
東京自治労連(野村幸裕書記長)は二月七日、「不公正な行為を繰り返す企業を競争入札に参加させること自体、都民の信頼を裏切る。『公共サービスの質の向上』という目的と矛盾する」とコメントを発表しました。
市場化テスト法は「当該公共サービスに対する国民の信頼の確保に支障を及ぼすおそれがあるもの」は、入札に参加できないと定めています(欠格事由)。しかし都は「この規定にLECのケースは該当しない」。内閣府は「検査検定業務が市場化テストの対象となった場合に、検査を受ける側の業者が参入できないようにする規定」と説明します。
この制度に詳しい尾林芳匡弁護士は「公共サービスは法令を順守して行うもの。行政から改善勧告を受けるなどした企業は担い手としてふさわしくない。法の欠格事由規定を積極的に活用するか、自治体独自の基準を整備して、問題企業は排除するべきだ」と話しています。
LECのコメント 批判があるのは承知している。大学については改善措置をとる。ほかの事業でも、質の高いサービスを受講者に提供していく。