2007年2月26日(月)「しんぶん赤旗」
貧困打開へシンポ
ワーキングプア放置できない
幅広く運動を交流
熊本
「ワーキングプア(働く貧困層)」を番組で取り上げたNHKの鎌田靖キャスターを招き、貧困の原因と打開を考えるシンポジウムが二十五日、熊本市で開かれました。同シンポは、弁護士や大学教授らでつくる実行委員会が主催。働いても生活保護水準以下の生活を強いられるワーキングプアの実態と運動を交流しました。
鎌田氏は昨年、放映された番組の製作経緯について、「格差のあるなし」が社会的議論を呼ぶなか、「貧困の生の実態を突き付けたかった」と番組の意図を紹介。そのうえで「まじめに働いても、生活できる賃金が得られない人々が多数生まれている。同時に、事態をより深刻にしていることは、このようなワーキングプアがすべての人に起こり得るということだ」と指摘し、「このような社会を放置していいのか、ということを強く問いかけたい」と訴えました。
討論では、鎌田氏の提起を受け、連合熊本、熊本県労連などの労組幹部、地元中小企業の経営者、大学教授など六人のパネリストがそれぞれの立場で、広がる貧困の原因と打開に向けた考えを交換しました。
所得格差の大きさを示すジニ係数が全国四番目に高く、貧富の格差が拡大している熊本県。討論では、同県の深刻な実態とともに、その要因として、「規制緩和による地方経済の落ち込みが大きい」(東光石油社長)、「労働法制『改正』が非正規労働者の増大に拍車をかけている」(熊本学園大学教授)などを指摘する声が相次ぎました。
また、貧困の打開方向として連合熊本ユニオンの代表は「非正規労働者の組織化と政策を強化していきたい」と発言。東光石油社長は「東京の大企業の理論を熊本の中小企業がまねしてはならないということが分かった。労働者をコストと考えず人材と考えるべき」と述べ、フリーター歴もキャリアとして評価し、地元中小企業全体で採用する取り組みをすすめていることなどが紹介されました。
非正規の実態告発
大阪
「安心して働き、生活するには」などをテーマにした「ワーキングプア」シンポジウムが二十五日、大阪市で開かれ、八十五人が参加しました。『労働ダンピング』の著者、中野麻美弁護士ら四人のパネリストが労働現場の実態などを報告し、会場も含めて熱心な討論が交わされました。主催は「おおさか派遣・請負センター」(村田浩治所長・弁護士)。
中野さんは豊富な体験談を通し、生活できない低賃金や、契約更新のたびに労働条件を不利益変更されるなど、非正規社員をめぐる悲惨な実態を告発しました。
松下子会社の偽装請負を告発した吉岡力さん、全労働近畿地方協議会議長の秋山正臣さん、大阪労連事務局長の久保田好雄さんがそれぞれの立場から発言。裁判中の吉岡さんは「告発して終わりではありません。このたたかいは人間の尊厳をかけたたたかいだからです」と強く訴えました。
参加した契約社員の女性(36)は「私も勇気をもらえました。社会全体の取り組みとして変えていかな、と思いました」