2007年2月25日(日)「しんぶん赤旗」
主張
冬季国体
開催地の悲鳴と要望に耳傾けて
国民体育大会(国体)の冬季大会が、難航している開催地選びに端を発して、あり方そのものの見直しを迫られています。
すでに終了した今年の大会でも、スケートとアイスホッケーの会場(群馬県)が決まったのはやっと一年前でした。来年はスケートの長野県開催が確定しているだけで、スキーとアイスホッケーは未定です。
通常は、三年前には開催地が確定される手はずになっていますが、これでは、大会の準備に支障をきたしますし、いつまでも会場が不確定では競技者も落ち着きません。
のしかかる財政負担
自治体が手を挙げるのを渋る一番の理由は、開催地にのしかかる財政負担です。スケートリンク、アイスホッケー場、スキーのジャンプ台、バイアスロン会場などの整備・運営費と、選手や観戦者の送迎や安全対策に経費がかさみます。大会運営費だけでも三億円はかかるとみられています。
そこから、既存の競技施設があり大会運営にたけた自治体に頼りがちになり、これまで北海道はスキー競技を十四回も開いています。しかし、どの自治体も財政がひっ迫しており、「そうたびたび」とはいかない状況に置かれ、開催地は悲鳴をあげているのです。
苦肉の策が分散開催ですが、これも限度があります。二〇〇五年の大会のようにスケートが山梨県、アイスホッケーが東京都、スキーとバイアスロンが岩手県と三都県にわたったのでは、広域すぎて一体感もなく、「総合スポーツ祭典」としての意義が薄れてしまいます。
もともと、国体には「地方スポーツの振興と地方文化の発展に寄与する」との目的があります。それが、開催地難のために冬季大会の引き受け手がないというのでは、この目的が成り立たないわけですから、国体の存在自体が問われているのです。
冬の国体は、開催地の地元の人びとの情熱と献身的な活動によって支えられています。凍結する寒さのなかでの家族的なもてなしが若い競技者たちの心をとらえ、冬の競技ならではの大切な交流の機会になっているといえるでしょう。そのことを考えると、冬季国体の財政的基盤を確立して安定した大会になるように、心をかたむけて打開策を検討していかなければなりません。
全国知事会が〇二年十二月に採択した「国民体育大会に関する緊急決議」も、国体の簡素・効率化、共催者としての応分の負担、開催都道府県の自主的・弾力的な運営などを、一方の主催者である国と日本体育協会(日体協)につよく要請しました。
これを受けた日体協の国体委員会は、「新しい国民体育大会を求めて」(〇三年三月)と題した提言をまとめましたが、簡素・効率化に努めるとしたものの、直面している自治体負担の軽減と国・日体協の応分負担については決め手を欠いています。
開催地の熱意にこたえ
提言では、二十一世紀の国体を「国内最高水準のスポーツ大会を構築する」としていますが、それは競技団体の立場で、地域のスポーツ振興を含め福祉と生活の向上を担う自治体の役割がないがしろにされており、かえって開催地の人びとの熱意をそぐことにもなりかねません。
この際、国と日体協が開催地となる自治体の悲鳴と要望に耳を傾けてこそ、問題解決の道が開けることを肝に銘じるべきです。求められているのは、主催三団体が心ひとつにして取り組めるかどうかです。