2007年2月21日(水)「しんぶん赤旗」
ここが知りたい
「貧困と格差」 だれが広げた
国会この10年 各党の態度(上)
生活保護水準以下でしか暮らせない家庭が十軒に一軒、四百万世帯ともいわれるなど、国民全体に広がる「貧困と格差」。国会でも重要な論戦テーマとなっています。この「貧困と格差」を生み出す政治をおしすすめたのはどの党か、誰が反対したのか。十年間の国会での態度を検証します。
労働法制規制緩和
働くルール破壊の“3点セット”
すべて反対 共産党だけ
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「貧困と格差」が広がった根源は何か。主要資本主義国でつくるOECD(経済協力開発機構)の「対日経済審査報告」(昨年七月)は、「非正規労働者の割合の増大が、日本における市場所得の格差拡大の主要な理由」と指摘しています。
それを可能にしたのが、九〇年代後半から続く一連の労働法制の規制緩和―とりわけ派遣労働の拡大、裁量労働制の導入と拡大、有期雇用制の拡大の“三点セット”です。自民、公明両党も「(労働の規制緩和が)格差の拡大を招いたことは認める」(公明党・斉藤鉄夫政調会長)と言い、民主党の松本剛明政調会長も「非正規の著しい増加の主因は、度重なる派遣法制の変更にある」(一月二十九日、衆院本会議)と認めます。問題は、いったい誰が規制を緩和したかです。
民主も派遣推進
もともと労働者派遣は、労働者からの「ピンハネ」を防ぐため、職業安定法で禁じられていました。その例外として、一九八五年に労働者派遣法がつくられ、二十六業種に限定されていた労働者派遣が、九九年の改悪で原則自由化されたのです。今日の千七百万人といわれる非正規雇用を生みだし、格差・貧困拡大の引き金となりました。
これを「労働者に多様な選択肢を確保し、就業機会の拡大を図る」(公明党議員の賛成討論)などと推進したのが自民、公明と民主、自由(現民主)の各党でした。社民党も賛成しました。
日本共産党だけが「大量の低賃金、無権利の派遣労働者をつくりださざるを得ない」(市田忠義参院議員)と反対しました。
有期雇用を拡大
労働法制の要である労働基準法は、九八年、二〇〇三年に改悪されています。九八年の改悪は、何時間働いても労使が決めた時間しか働いたとみなさない裁量労働制を、すべてのホワイトカラーに拡大。変形労働時間制の緩和や、三年たてば使用者が自由に解雇できる有期雇用制の新設も盛り込みました。
共産党は、改悪案は「ただ働きを合法化し、雇用の保障のない無権利な労働者を大量につくりだす」と批判し、反対しました。これに対し、自民、民主、公明、自由、社民の各党は、改悪案を「おおむね時宜を得た内容」と賛成。民主党の笹野貞子参院議員は五党を代表し、「経済社会の変化に対応した主体的な働き方のルールをつくる」と賛成討論しました。
〇三年の労基法改悪では、有期雇用を最大五年に伸ばし、裁量労働制の導入手続きを大幅に緩和しました。これにも自民、民主、公明、自由の各党が賛成しています。
雇用の流動化を促進するため、企業のリストラを国が財政的に援助する雇用対策法等改悪(〇一年)は、自民・保守、公明、民主、自由の各党が賛成。労働者の派遣期間の上限延長、製造現場への派遣解禁などを盛り込んだ〇三年の派遣法改悪には自民、公明両党が賛成しています。
このように働くルールの破壊は、自民、公明が推進し、民主もそのほとんどに賛成したのです。
社会保障連続改悪
介護保険改悪・児童扶養手当削減
賛成した自民・公明・民主
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いざというときに国民が頼る「命綱」である社会保障制度。自民党中心の政権(自社さ、自自公、自公)ですすめられた制度の連続改悪が、「格差と貧困」に拍車をかけています。
二〇〇五年十月から介護施設の居住費・食費が全額自己負担になりました。退所に追い込まれる「介護難民」が全国で生まれています。
この事態は〇五年五月に成立した改悪介護保険法によるものです。自民・公明の与党と民主党の賛成で改悪は強行されました。自民・公明は「利用者負担の不均衡の是正」(自民党・北川知克衆院議員、〇五年四月二十七日の厚生労働委)と主張し、負担増を当然視。民主党も「あるべき介護保険制度へと一定の前進」(大島敦衆院議員、同)と賛成しました。
介護保険法が成立したのは一九九七年十二月(二〇〇〇年四月から実施)です。成立させたのは自社さ政権。民主党は「二十一世紀の展望を切り開く新たな制度」(今井澄参院議員、当時)と賛成しました。
日本共産党は「保険あってサービスなし」になる危険性を指摘。抜本的改革を求めました。〇五年の改悪にもきっぱり反対しました。
国保証取り上げ
高すぎる国民健康保険料を払えない人が保険証を取り上げられ、病院にかかれない事態が全国で続発しています。
滞納者に発行される「資格証明書」では、病院窓口で治療費全額をいったん支払わなければならないため、お金がなくて病院にいけずに命を失う人も出る深刻な事態です。
「資格証明書」発行を自治体の義務にしたのは、九七年十二月の介護保険法成立と一体に行われた国民健康保険法の改悪です。
賛成したのは、自民、社民、さきがけの与党と、民主党です。これらの党からは、問題点を指摘する議論も意見もありませんでした。日本共産党は、「(国保料が)払えないからと罰則を強化して保険証を取り上げるのでは、国民の命を守る政治の責任が果たせるか」(西山登紀子参院議員=当時=の本会議質問)とことの重大性を指摘し、反対しました。
医療改悪では、民主党は健康保険法改悪(二〇〇〇年)などに反対していますが、その理由は「政府・与党の主張する抜本改革の第一歩とはいえない」(同年十一月の衆院本会議)というものでした。
母子家庭の命綱
母子家庭の生活を支える命綱である児童扶養手当。支給から五年たてば手当を最大半減するという大削減を決めたのは、〇二年十一月の母子寡婦福祉法等の改悪です。
自民・公明の与党は「母子家庭の自立促進」のための就業支援の強化をする、として改悪を推進しました。しかし、就労支援の効果について坂口力厚労相(当時、公明党所属)は、「やってみなければわからない」などという無責任なものでした。民主党は、問題点は指摘しつつも、最後は賛成に回りました。
日本共産党は「母子家庭の生活を保障する国の責任を放棄するもの」ときっぱり反対しました。
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