2007年2月21日(水)「しんぶん赤旗」
主張
労働時間規制除外
国民は誤解してない。断念を
長時間労働野放し、残業代取り上げの「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入法案の今国会提出をめぐり、安倍晋三首相と柳沢伯夫厚生労働相が“見送り”を表明しました。
十五日の参院厚生労働委員会で日本共産党の小池晃議員の質問に首相が、また、十九日の衆院予算委員会で高橋千鶴子議員に対し厚労相が答弁したものです。国会開会直前に安倍首相が「今は難しい」とのべたものの、その後も財界の日本経団連が法案提出を迫っていました。首相と厚労相そろっての見送り答弁は世論と運動の反映です。
残業代ゼロ、過労死促進
同時に、安倍首相は、「法案は見送るが、今後も検討し、国民の理解がえられるようにする」と答えています。七月の参院選後の法案提出をねらっているのです。
“国民の理解を得る”というのは、日本経団連の御手洗冨士夫会長もいっています。ホワイトカラー・エグゼンプションについて、「一部で、『残業代ゼロ制度』と表現されているが、これは大きな誤解である。引き続き、制度に関する国民の理解を深めていく必要がある」(一月二十二日の記者会見)とのべています。
安倍首相らのいう“国民の理解を得る”とは、“国民が誤解している”という見方にたつものです。
国民は誤解なんかしていません。厚生労働省がいくら「自律的労働時間制度」↓「自由度の高い働き方」↓「自己管理型労働制」と呼び名を変えても、ホワイトカラー・エグゼンプションの本質は変わりません。ホワイトカラー・エグゼンプションとは、「ホワイトカラー」労働者を一定の条件をつけて、現行労働基準法の労働時間規制から、「エグゼンプション(除外)」することです。
提出を見送った法案要綱には、自己管理型労働制の対象となった労働者について、現行の労働基準法の労働時間規制や時間外、休日および深夜の割増賃金に関する規定は「適用しない」と明記しています。一日八時間、週四十時間を超えて働いても、割増賃金つまり残業代の規定は適用しない、支払わないとはっきりいっています。まさに「残業代ゼロ制度」です。誤解の余地などありません。
御手洗会長は、「ワーク・ライフ・バランスの実現には、自律的な働き方の推進が不可欠であり、経団連としてもこうした観点から、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入すべきであると主張している」とのべています。
「自律的な働き方」や「自己管理型労働」というのがくせものです。
東京労働局の調査によると、二〇〇五年度に過労死・過労自殺し労災認定された四十八人のうち、勤務時間を自己管理することができる工場長、店長、本社の部長などが十一人を占めています。ほかにも営業職十人、システムエンジニア五人、現場施工管理者四人です。これらをあわせると全体の六割以上になります。
法案要綱では、対象者は管理監督者の「一歩手前に位置する者」とされており、大きく拡大されます。
完全にやめさせるまで
衆院本会議の代表質問(一月三十日)で志位和夫委員長が指摘したように、労働者は「成果」をあげるために際限なく働かなければならず、過労死がいっそう増えることは避けられません。「残業代取り上げ、過労死促進法」の導入はきっぱり断念すべきです。
今国会に提出させなかった世論と運動に確信をもち、政府・与党が完全にやめるまでたたかいを強めていきましょう。