2007年2月20日(火)「しんぶん赤旗」
いすゞが慰労金減らし
期間工の短期契約繰り返す
いすゞ自動車が、派遣労働者を期間工として直接雇用したのに二カ月の短期契約を繰り返している問題で、本来受け取れる「満期慰労金」が細切れ契約のため大幅カットされていることが十九日までに明らかになりました。労働者からは「いつ解雇されるか不安な状態のうえ、慰労金まで減らすとは許せない」との声があがっています。
労働者派遣法では、製造業で一年を超えて働いた労働者に、受け入れ企業が直接雇用を申し込む義務が生じます。
同社は昨年五月から十月にかけて藤沢、栃木両工場で一年を過ぎた千五百人を期間工として直接雇用。最初は三、四カ月の契約期間で、その後もわずか二カ月の短期契約を繰り返しています。
満期慰労金は、契約期間満了まで働いた人に支給。一カ月―六カ月まで契約期間に応じて金額が決まり、契約期間が長いほど多くなります。欠勤せずに満六カ月働けば四十二万円が受け取れます。
ところが、十カ月働いている男性は、六カ月+四カ月=五十九万円受け取れるはずが、最初は四カ月契約で二カ月契約を三回更新しているため、四カ月+二カ月×三=三十五万円しか受け取れず、二十四万円も減少。七カ月働いている男性も、四十二万円から二十九万円へと十三万円も減りました。他社にも慰労金がありますが、契約更新しても勤務期間を通算して払われています。
同社広報部は「生産状況から契約期間を決めており労務費を下げるためではない。たまたまそういう人が出た」と説明します。労働者は「毎日残業するほど仕事があるのに短期契約しかしないのは、いつでも辞めさせ、慰労金を減らすのがねらいだ」と憤ります。
「いつ雇い止めになるか不安で仕方がない。雇い止めになれば寮も追い出され、職も住まいも失う。長期の契約期間にしたり、長く働いている人は正社員に採用するなど安定した雇用にしてほしい」と訴えています。
この問題では、日本共産党の小池晃参院議員が「派遣労働者を直接雇用する場合は長期雇用にすべきだ」と追及。柳沢伯夫厚労相は“必ず長期雇用を申し込まなければならない義務があるというのが直接雇用の趣旨だ”と答弁しています(十五日)。
いすゞ 労働者ら厚労省に要請
“2カ月ごと契約不安”
“短期繰り返し是正を”
いすゞ自動車が、労働者を派遣から直接雇用の期間工に切り替えたのに二カ月という短期契約を更新している問題で、いすゞの労働者らが十九日、厚生労働省に対し同社が期間工を安定した長期雇用で雇うよう指導することなどを要請しました。
労働者派遣法では製造業で一年を超えて働いた派遣労働者に、受け入れ企業が直接雇用を申し込む義務が発生します。いすゞ自動車は昨年五月から十月にかけて一年の派遣期間を過ぎた労働者千五百人を直接雇用の期間工に切り替えました。
要請には同社の工場で期間工として働く労働者が出席し、日本共産党の大森猛元衆院議員、小池晃参院議員秘書の大槻操氏が同席しました。
労働者が「契約更新されるか分からず、みんな不安な気持ちで働いている。雇い止めになればまた派遣に戻ってしまう」「多くの人が独身寮に入っており、雇い止めになれば住む場所まで失ってしまう」と訴えました。
本来受け取れる「満期慰労金」が細切れ契約のため大幅にカットされていることも指摘。短期契約の繰り返しは労働者派遣法の考え方にも反しており、長期雇用にするよう指導することを求めたのに対し、厚労省側は「労働者派遣法にもとづく指導はできない」と答えました。
柳沢伯夫厚労相は経済財政諮問会議で「必ず長期雇用を申し込まなければならない義務がある」とのべており、小池議員の質問(十五日)にたいしても、「趣旨はその通り」と答えています。
労働者側が、厚労省の回答は「大臣の発言と矛盾する」と指摘しましたが、厚労省側は明確に答えませんでした。
労働者側はこのほか、▽一定期間を過ぎた期間工に正社員の採用試験を受けさせること▽やむをえない事情のない限り、雇い止めをしないこと▽月四十五時間の上限を超える残業が長期間続いている職場に改善指導をすべき―と求めました。
また、いすゞの期間工になった後も、以前の派遣会社の担当者が契約期間を延長するかどうかの意思確認を行うなど実質的な労務管理を続けている実態も示して、労働者の願いにこたえた安定雇用になるよう指導すべきだと強調しました。
「期間工」 自動車や電機メーカーなどに直接雇われ、工場などで短期間働く契約社員のこと。製造業では一年を過ぎると、受け入れ企業が派遣労働者に直接雇用を申し込む義務が生じますが、正社員ではなく期間工として雇うケースが多く、不安定雇用を助長するとして問題になっています。