2007年2月19日(月)「しんぶん赤旗」
こんな都政に誰がした
福祉切り捨て 大型開発 知事の“暴走”
豪華海外出張に税金飲食、四男重用など都政私物化…。石原慎太郎・東京都知事の乱脈・暴走に都民の批判が高まっています。都知事選(三月二十二日告示)を前に、その石原知事との対決姿勢を、民主党がにわかに強調し始めました。しかし、石原知事の暴走を都議会で支えてきたのは、民主党を含む自・公・民「オール与党」です。石原与党は暴走をいかに支え激励してきたのか、またチェック機能を放棄して、一体となって推進してきたのか、を見ました。
「オール与党」で知事応援
自民 公明 民主 石原知事議案に100%賛成
東京都議会は、日本共産党を除く自民党、民主党、公明党などによる「オール与党」で石原都政を支えています。
一昨年夏の都議選後、知事が提出した四百八十九件の議案への賛否率を見ると、自民、民主、公明は100%賛成(表)。民主党の前原誠司・前代表もテレビ番組で「東京で100%賛成でオール与党になっている」と認めています。
この石原知事と一体となった「オール与党」体制の八年間に、福祉・保健関係費を四百五十億円も減らし(一九九九―二〇〇五年度決算)、中小企業予算を三割も削減する一方、再開発や大型幹線道路など大型開発をひたすら促進してきました。いま、オリンピック招致をてこに、この大型開発を加速し、八兆円規模で進めようとしています。
自民党は、都の「財政再建推進プラン」にもとづく福祉など都民施策の切り捨てについて、「時には都民の皆様に痛みを分かち合っていただく」(〇三年十月六日の本会議)と後押し。公明党も、石原都政の「福祉改革」の名による福祉切り捨てを「わが党の提案を都は全面的に受け入れて作成した。知事と関係局の英断を高く評価する」(〇一年二月二十七日の本会議)と絶賛しました。
大型開発中心の「都市再生」に対しても、自民党は「必要なのは、均衡ある国土の発展ではなく、首都圏のポテンシャルを高めること」(〇三年九月二十六日の本会議)とあおり、公明党も大型開発推進のための環境影響評価制度の改悪を「スピーディーな都市再生を図るため、アセス手続きの一部を合理化したことも理解する」(〇二年六月十八日の本会議)と評価しました。
一方、石原知事の豪華海外出張や四男重用の都政私物化を追及する日本共産党に対し、両党は昨年十二月十五日の本会議で「火のない所に無理やり火を起こす」(自民党)、「いたずらに疑義をあおるかのような質問は、あまりにもこそく」(公明党)と攻撃し、知事を弁護する始末です。
チェック機能を失った「オール与党」の姿勢が、石原知事の“暴走”を助長しているのです。
みんなが認める「民主は与党」
賛成してこられた―都知事
「推薦結構ですね。できたら共産党以外、公明党も、民主党にも、推薦してもらう。みなさん政策にずっと賛成してこられたんだから、その成果も出ている。そうしていただくとありがたい」(一月十九日の記者会見で、自民党が都知事選での石原氏推薦を決めたことについて問われて)
100%賛成―前代表
「東京で100%賛成でオール与党になっているが、それは知事が根回しした結果」(前原誠司・民主党前代表、十一日、テレビ朝日系「サンデープロジェクト」)
反対したことない―メディア
「今春の知事選に独自候補の擁立を表明している民主党も、これまで石原知事が提出した予算案に反対したことはない。知事の3期目公約の軸になる五輪招致にも賛成の立場だ」(「朝日」九日付)
民主党 急に「対決」いいだしたが…
マル福廃止・「君が代」強要…
アクセル踏み続ける
二〇〇五年の都議選で民主党は、「都議会の役割は知事をきちんとチェックすることだ。いいときはアクセルを踏み、悪いときはブレーキを踏む」(岡田克也代表=当時)と公約しました。ところが、都議選後、民主党は石原慎太郎知事が提出したすべての議案に賛成してきました。同党の前原誠司前代表は「知事が根回しした結果」などと言い訳していますが、実際はどうなのか――。
この八年間、石原知事は「何がぜいたくかといえば、まず福祉」といって福祉を切り捨て、大型開発をすすめてきました。民主党は、この逆立ち政治に積極的に加担し、アクセルを踏みつづけてきたのです。
福祉では、寝たきり高齢者の老人福祉手当の廃止、老人医療費助成(マル福)の廃止(今年六月末)、シルバーパス全面有料化、母子保健院の廃止などに、民主党はすべて賛成してきました。情け容赦ない福祉削減の一方で、石原都政は、「都市再生」の名による超高層ビル林立の再開発や三環状道路の建設などの投資型経費に毎年一兆円規模の財政を投入してきました。民主党はこの大型開発に、“借金してでも投資を増やせ”とハッパをかけてきたのです。
昨年九月、東京地裁で違憲判決がでた教育現場での「日の丸・君が代」の強制の問題でも、民主党は、「君が代」斉唱で起立しなかった生徒が相次いだことを教員の責任だといい、教員の処分まで求めました。
まさに、石原知事の悪政の数々を、自民、公明両党などと一体で推進してきたのが民主党です。
政調費透明化反対・海外豪遊
自公と足並みピタリ
「公私の境目を見失い、周囲にたいこ持ちを置く裸の王様」――十四日の都議会本会議で民主党の田中良都議は、海外出張、交際費、四男重用問題を取り上げ、石原知事をこうこき下ろしました。果たして、都議会民主党にそんな批判をする資格があるのでしょうか。
民主党は、豪華海外出張や政調費の使途の透明化問題でも自民、公明両党と足並みをそろえてきました。
民主党は二〇〇一年、都民の批判を受けて中止していた海外視察を自公両党とともに再開し、毎年三人、四年間で十二人の視察団を派遣。〇四年には都議の海外視察で最高額の一人あたり二百十八万円もかけました。
なかでも〇二年十月にはカジノ調査の名目で米ラスベガスに二泊。その報告書も、識者から「現地に行かなくても書けるようなリポートだ」と評される始末でした。
〇五年の都議選では、豪華海外視察に対する都民の批判が高まり、「毎日」(同年七月十四日付)のアンケートでは、都議当選者全体の55%が「見直しが必要」「(視察は)必要ない」と答えました。
しかし、都議選後の昨年十月、民主党の四都議が観光地として有名なブラジルのイグアスの滝などを視察し、都民からは「知事がガラパゴスなら、民主党はイグアスか」と批判の声があがりました。
民主党は昨年十二月都議会で、知事の豪華海外出張について「都民を大きく失望させる」(馬場裕子都議の代表質問)と批判しましたが、この言葉は民主党自身にそっくり返ってきます。
都議会の会派に支給される政務調査費(一人あたり月額六十万円)の使途の透明化は、都民の多数が求めています。
〇五年の都議選では、政調費の領収書添付について、民主党当選者全員の三十五人が「賛成」と答えていました。(「朝日」同年九月二十六日付)
ところが、都議選後の〇五年九月都議会で、日本共産党都議団が都民への公約を実践する立場から、政調費の領収書添付を義務化する条例改正案を提案すると、民主党は自公両党と非公式の「協議」を行うことを口実に、条例改正案に反対。昨年の都議会でも日本共産党などが提案した条例改正案に反対しました。
選挙では石原都政に「対決」ポーズを取り、選挙が終われば、元の「オール与党」に――これが民主党の“実像”です。
都議会での民主党議員の発言
福祉手当は寝たきりを助長
「老人福祉手当という現金給付制度は、寝たきりを助長する」(03年3月7日、本会議)
「(障害者医療費助成の切り捨てに反対する意見は)時代に即した福祉改革の足を引っ張る」(02年9月30日、本会議)
借金追加し公共事業を増やせ
「都債の追加発行による投資的経費の増額も考慮すべき」(03年3月5日、予算特別委)
「(大規模開発中心の)都市再生に大きく期待し、その推進を強く望む」(02年6月19日、本会議)
起立しなかったら、教員を処分しろ
「(『君が代』で)多くの生徒が起立しなかった…これにかかわった教員は処分すべき」(04年3月16日、予算特別委)
「ババァ」発言にも…
「(石原知事のババァ発言について)女性ファンは大変ショックを受け、減ってしまったようですが、はっとするほど知事は生き生きとされていらっしゃいます」(02年2月27日、本会議)
知事側近の依頼受け
「やらせ質問」
都議会民主党の石原都政との癒着ぶりを示す象徴的な事件があります。都施設の運営をめぐり、民主党都議が二〇〇五年三月十四日の都議会予算特別委員会で、知事側近の浜渦武生副知事(当時)の依頼を受けて「やらせ質問」を行った問題です。
この問題で、都議会に三十五年ぶりに調査権限のある百条委員会が設置されました。同委の報告書によると、質問に先立ち、民主党と浜渦副知事が六回にわたり接触し、「質問の打ち合わせ」を一緒にしていました。
石原知事は同年六月の記者会見で、質問の依頼について、「『自民党にでもやってもらったらどうか』といったが、どうも自民党も動きそうもない。で、民主党になった」と、「やらせ質問」に自身が関与していたことを認めました。
行政をチェックすべき議会の質問を、石原知事側に依頼されて行うなどは、前代未聞の癒着といえます。
共産党 乱脈・石原都政と対決
都政転換 吉田万三さんで
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「他の追随を許さないのが日本共産党都議団の調査だ」(日刊スポーツ二〇〇六年十二月十一日付)。石原都知事の乱脈、私物化の実態を明らかにし、石原タブーに風穴をあけるきっかけをつくったのが、共産党都議団の調査、告発でした。
昨年十一月十五日に、総額二億四千万円にのぼる豪華海外出張の実態を告発したのをはじめ、都事業に四男を重用していた都政私物化問題、都民の税金を使った飲食問題など、石原知事の乱脈ぶりを次々と明らかにしたのです。
メディアも党都議団の石原追及に注目、テレビが「石原慎太郎都知事VS日本共産党都議団」(フジテレビ系)と報じれば、新聞も「存在感を強める」(「東京」)と書きました。こうして、石原都政の乱脈、私物化問題は、「しんぶん赤旗」の連続スクープともあいまって、都政を大きく揺るがすにいたっています。
日本共産党都議団が「他の追随を許さない」活躍ができるのは、自公民「オール与党」議会のなかで、都民の立場にたって、石原都知事の暴政と正面から対決してきた政党だからです。
日本共産党はこんど都知事選挙で革新無所属で出馬する吉田万三さんを推薦し、石原都政の転換をめざしてたたかいます。
吉田万三さんは十四日に「都政改革プラン」を発表、「憲法を都政にいかし、税金のムダづかいをやめて、くらし・福祉最優先の東京をめざします」と、石原都政の転換を訴えました。
「オール与党」議会のなかで石原都政との対決を貫いた日本共産党が無党派の人々と共同し、推薦する吉田万三さんでこそ、都政の転換は可能です。