2007年2月18日(日)「しんぶん赤旗」
イタリア
米CIA26人を起訴
誘拐罪で協力者9人も
【パリ=浅田信幸】イタリアからの報道によると、ミラノの地方検察当局は十六日、四年前にエジプト人イスラム法学者を不法に拉致し国外に移送した件で米中央情報局(CIA)工作員二十六人とこれに協力した伊軍情報機関員ら九人の計三十五人を誘拐罪(一部は共犯罪)で起訴しました。ミラノ地裁は同日、初公判を六月八日に開くことを決めました。
CIAによる一連の不法拉致・拷問についての世界で初めての正式裁判となるもので、欧州の司法の手でCIAの不法活動が暴かれ断罪されるのかどうか注目されます。同種の事件では、ドイツのミュンヘンの検察当局が先月末、レバノン人の拉致・移送問題でCIA要員十三人に対する逮捕状を発行していますが、米側は協力を拒否しています。
今回起訴されたのはCIAのジェフ・カステリ元ローマ責任者、ロバート・セルドン・レディー元ミラノ責任者、伊軍事情報機関のニコロ・ポラーリ前局長ら。ミラノ地裁は先月から予備審問を進めてきましたが、CIA工作員は一人も出廷せず、ポラーリ前局長は関与を否認しました。
容疑は、二〇〇三年二月、ミラノの路上で、米国がテロ容疑者とみなしていたアブ・オマル師を拉致し、北イタリアのアビアノ米軍基地からエジプトに移送したというもの。オマル師は今月十一日にエジプトの刑務所から釈放されましたが、収監中に拷問を受けたと主張しているといいます。
同事件は、欧州議会が十四日に採択したCIAによる欧州での不法活動を非難する調査委員会報告でも取り上げられています。
この件でプローディ首相は微妙な立場に追い込まれています。今月七日にはローマ地検がイラクでの銃撃による伊情報機関員殺害の罪で米兵士を起訴したばかりです。今回起訴されたCIA要員二十六人にはイタリアの裁判所が欧州連合(EU)共通の逮捕状を発行していますが、政府はこれ以上の対米関係険悪化を恐れて米国に身柄の引き渡しを要請しておらず、与党内の左翼勢力から怒りを買っています。