2007年2月17日(土)「しんぶん赤旗」

たばこ規制条例 賛否調査に組織票

JTに反禁煙“司令塔”

「今後も続ける」


 「世界たばこ規制枠組み条約」を受けて、受動喫煙の被害を減らそうと全国の自治体で公共施設での禁煙や繁華街などでの歩行禁煙化の取り組みが広がっています。一方、こうした流れに対抗、自治体の規制条例賛否アンケートをめぐって、日本たばこ産業(JT)本社が関係支店を通じて社員に「反対票」を投じるよう組織動員をかけるといった動きを強めています。実態を追いました。(山本眞直)


 神奈川県庁のホームページ。実施中のインターネットアンケートの数字にある異変が起きました。一月二十四日を境に賛否の数字が逆転しました。「受動喫煙を防止するための公共的な場所での喫煙規制についてのアンケート」です。

 アンケートは「公共施設での喫煙規制の条例化を視野に、県民の意見を聞く」(県健康増進課)として昨年十二月二十七日から一月二十六日まで実施しました。一月二十三日まで喫煙規制に賛成の累計が九百九十八で、反対の六百五十二を上回っていました。ところが二十四日には賛成の千百四十四に対し、反対が千百八十六と逆転。最終日の二十六日には賛成千七百三十八に対し、反対が千九百八十五となりました。

 「組織的な動きがあったのかもしれない」。松沢成文県知事は十四日の定例記者会見で、「逆転の数字」についての感想を聞かれ、こう答えました。

 真相はJT本社が明かしました。本紙の取材にJT本社は「神奈川県がホームページで禁煙条例についてのアンケートを実施している。社員にたいしアクションをしてほしい、と周知文書を出しました」と認めました。

 同本社によれば、「われわれは(喫煙者と非喫煙者との共存をめざす)分煙をあげている。規制条例には『反対』とわざわざ言わなくても社員はわかる。社員は営業で販売店にもそれをよびかける」。

 周知文書は一月中旬に本社の「社会環境推進室」から横浜支店を通じて神奈川県内の社員に通知された、といいます。

 同「推進室」は、「全国四十七都道府県の禁煙条例や分煙化などの動向や情報を常に収集、密接に連絡を取り合い、支店とくんで対応している」(本社広報部)といいます。反禁煙キャンペーンの“司令塔”です。

 神奈川県で公共施設全面禁煙化の県条例制定が実現すれば全国初。JT本社は「組織的動員と誤解されてもやむを得ない」としたうえで今回の“アンケート作戦”の意図をこう説明しました。

 「神奈川県で喫煙規制条例が成立すれば、他の自治体に波及する恐れがあった。(組織的動員は)いまに始まったことではない。〇三年のたばこ税増税反対署名にも全たばこ業界をあげて取り組んだ。われわれは今後も、この手のものにものを言っていく」

 禁煙教育をすすめる会の仲野暢子さんは「JTの組織的動員は、ある県で自動販売機規制の動きがでたときも反対ファクスを大量に送りつけるなど、今回にかぎったことではありません。企業の利益のためには何をしても許されるという発想はあまりにもエゴ丸だしで、フェアではありませんね」とたしなめます。

 神奈川県健康増進課は、「今回のネットアンケートは参考材料の一つ。統計的にもさらに精度の高い調査を専門家のアドバイスもうけながら検討していきたい」としています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp