2007年2月15日(木)「しんぶん赤旗」
米でイラク政策転換求める
州議会 撤兵要求を決議
バーモント
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【ワシントン=山崎伸治】米バーモント州議会は十三日、上下両院それぞれで、イラクからの米軍の撤退を「速やかに開始する」ことをブッシュ大統領と連邦議会に求める決議を採択しました。米国の州議会で撤退要求決議が採択されたのは初めてです。上院は二四対五、下院は九五対五二の表決でした。
原案通り採択された上院の決議は、「イラクにおける米軍の拡大はまさに誤った外交政策の方向であり、イラクにおける米軍の駐留は、同国および地域の安定にも、国内外の米国民の安全にも寄与してこなかったし、これからも寄与しない」と指摘。
さらに、ダグラス州知事に対し、「イラク戦争と、発表された米軍増派に反対を表明し、米軍のイラクからの撤退を支持する」こと、ブッシュ大統領と連邦議会に対し、「イラクからの米軍部隊の整然とした撤退を速やかに開始する」ことを、それぞれ求めています。
下院では、決議に反対する共和党に配慮して、原案の一部を削除し、米兵への支援を表明する新たな文言を加えました。
バーモント州では、二〇〇五年三月、全米で初めて米軍のイラク撤退を求める住民投票が、全自治体の五分の一にあたる約五十自治体で行われ、三十九自治体が撤退に賛成していました。
同州以外でも、米軍増派反対や即時撤退の要求を表明し、戦費の支出をしないよう求める決議案が議会に提出されています。本紙の調べでは、以下の各州の議会です。カリフォルニア、イリノイ、カンザス、ミネソタ、ミズーリ、モンタナ、ニュージャージー、ニューメキシコ、オクラホマ、ロードアイランド、テネシー、ワシントン。
下院 増派反対決議案を討議
【ワシントン=山崎伸治】米下院本会議は十三日、ブッシュ政権のイラクへの米軍増派に反対する民主、共和両党議員提出決議案の討議を開始しました。十五日まで、一日十二時間、三日間で三十六時間討論し、十六日に採決の予定です。採択は確実とみられます。決議案に拘束力はないものの、ブッシュ政権に対する政治的な圧力となります。
決議案は、民主党のスケルトン軍事委員長とラントス外交委員長、共和党のジョーンズ議員が共同提案したもの。「勇敢で立派に働く米軍兵士を支援し、擁護する」「米軍戦闘部隊を追加派遣する決定を承認しない」という簡潔な内容です。
下院にはこのほか十二日までに、イラク米軍の撤退や戦費支出の停止、増派計画の中止を求める法案・決議案が十四件提案されています。
今回の決議案の討議では議員に一人当たり五分間の時間が割り当てられ、三日間で全議員(四百三十五人)の発言を保障しています。
ただ法案に対する修正を認めないことを決めたため、共和党からは批判の声が上がっています。
討論の口火を切った民主党のペロシ下院議長は「過去四回の増派は暴力を激化させただけだった」と増派は誤りだと強調。
一方、共和党のベイナー院内総務は「イラクでのたたかいはそこにとどまらない。イスラムのテロに対する地球的規模のたたかいだ」と述べ、米国は勝利する必要があると述べました。
民主党からはこの日、退役軍人の議員が次々と発言。イラク帰還兵で昨年十一月の中間選挙で初当選したパトリック・マーフィー議員は「私はこの政権の間違ったイラク政策を目の当たりにした。他国の内戦に米兵を送り込むことは誤りだ」と強調しました。
同決議案が増派反対にとどまり、米軍撤退や戦費支出停止などの抜本的措置を求めていないことをめぐり、民主党の一部には不満もあります。ただペロシ下院議長は、イラク問題を引き続き取り上げていく考えを表明しています。
反戦運動家は地元選出の下院議員に対し、決議案に賛成するよう電話やメールで働きかける活動を行っています。