2007年2月11日(日)「しんぶん赤旗」
いじめ克服へシンポ
人権の大切さ知って
福岡・筑前町の自殺中学生遺族
名前と遺影公表
「生まれてきてくれた命たちへ」をテーマに、いじめを苦に自殺した子どもたちの遺族が集まり、いじめをどう解決するかを考えるシンポジウムが十日、東京都内で開かれました。福岡県筑前町の森美加さん(36)は、昨年十月、いじめを受け自殺した中学二年の長男啓祐さん=当時(13)=の名前と遺影を公表。発言した四人の遺族全員が「学校で何があったのか真実を知りたい」と訴えました。
ジェントルハートプロジェクトと、よこはまチャイルドラインが共催。約百人が参加しました。
約八年半前、娘の香澄さんをいじめ自殺で亡くしたジェントルハートプロジェクト代表理事の小森新一郎さんは、子どもを取り巻く環境に大きな危機があるとして「誰かの責任ではなく社会的責任として包括的に問題をとらえていかなければいけない」と語りました。
香澄さんの母で、同会理事の小森美登里さんは、香澄さんが残した文章から人権の大切さを読み取りました。学校の講演で「みんな自由の翼を持って生まれた命。お互いの翼=人権を大切にしあってほしい」と子どもたちに伝えています。美登里さんは「人権の大切さを伝えることができたとき、次の社会がやさしく温かなものになるのではないか」と語りました。
よこはまチャイルドラインの徳丸のり子常務理事は、いじめをしている生徒に対し「出席停止制度の活用」を盛り込んだ教育再生会議の第一次報告に危ぐを示し、「いじめっ子はおとなから傷つけられていることが多い」と指摘。「その子どもたちの気持ちを受け止めるべきなのに、断罪してしまっていいのか」と批判しました。
森さんはこの日、「元気な笑顔で生きていたという啓祐の存在を知ってほしい」と、長男の実名と遺影を公表しました。長男の写真を横に、込み上げる涙をこらえました。「どうして自殺しなければいけなかったのか。親は必死に受け入れながら一歩ずつ前を向いて歩いて行こうと思う」と心境を語りました。
二〇〇四年六月に自殺した埼玉県蕨市の中二女子生徒の父親は、事故報告書のみで終わらせようとする行政を批判。いじめを受けている子どもたちに「手紙や作文を書き、誰かに渡してほしい。目の付く所に置くだけでもいい。そうすれば、また新しい道が開けてくると思う」とメッセージを送りました。
シンポジウム後の記者会見で、美登里さんは「情報を共有し次の命を救いたい。だから、真実を知りたいと訴えているのです」と語りました。