2007年2月9日(金)「しんぶん赤旗」
パートの厚生年金拡大
労組「均等待遇を」 企業「負担増いや」
社保審ヒアリング
パート労働者への厚生年金の適用拡大に向けて、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)年金部会での議論が続いています。これまで六回にわたって、事業主団体や労働組合、学者の意見を聞くヒアリングを行い、八日からは追加ヒアリングを始めました。
厚生年金へのパート労働者の加入は、現在、週の所定労働時間が正社員の四分の三(三十時間)以上の人が対象です。厚労省はこの範囲を拡大して「週二十時間以上」にすることなどを検討しています。
従業員のパート比率が高い事業主団体は、拡大に強く反対しています。「協会全体で三百億円程度の負担増が生じ、家計と企業経営を直撃する」(日本チェーンストア協会)、「企業負担が経営を圧迫することは明白。中小業者は廃業に追い込まれる可能性がある」(日本生産技能労務協会)など、社会保険料の負担増が主な理由です。また「パート労働者の七割以上が反対している。多くは将来の年金よりも現在の収入を確保したいと考えている」(日本フードサービス協会)と、パート自身の反対も理由にあげています。
これに対して労働組合側は「パート労働者の均等待遇を推進し、すべての労働者に適用すべき」(UIゼンセン同盟)と拡大に賛成しています。
同時に「賃金についての切実感が増している中で、当面の手取減にこだわらざるを得ない実態にある」(全国コミュニティ・ユニオン連合会)、「将来のために保険料を払う余裕がない低賃金が問題であり、その改善が必要」(連合)など労働条件の見直しを求める意見も相次ぎました。
大沢真知子・日本女子大学教授は「コスト削減ができるから」という理由で、事業主が非正規社員を増やしてきたことを指摘。雇用における男女平等の達成のためにも、正規・非正規間の差がない制度設計が望ましいと述べました。佐藤博樹・東京大学社会科学研究所教授も、「社会保険・税の壁」のために労働時間の調整をすることが「人材育成を阻害するだけでなく、パート活動全体の処遇改善も妨げている」として、壁をなくすことは産業界にとってもよいことだと指摘しました。