2007年2月8日(木)「しんぶん赤旗」
拙速な薬務行政批判
薬害イレッサ訴訟 原告側証人が陳述
肺がん用抗がん剤「イレッサ」の副作用で死亡したさいたま市の肺がん患者の遺族が国と製薬会社「アストラゼネカ」社に損害賠償を求めた薬害イレッサ訴訟の口頭弁論が七日、東京地裁(矢尾渉裁判長)で開かれました。
原告側証人に立った別府宏圀医師(臨床薬理学、薬剤疫学)は、「イレッサの危険性を示す死亡例などの情報がありながら、『夢の新薬』として宣伝され、十分な危険性防止の手だても取られずに見切り承認された」と陳述。承認が申請からわずか五カ月で認められて販売された拙速な薬務行政を批判しました。
別府証人は抗がん剤の有効性について「延命効果」によって判断すべきだという見解をのべて、「腫瘍(しゅよう)縮小効果の指標だけで承認すべきではなく、命を短縮させるだけの危険情報は見逃すべきではない」と、抗がん剤の有効性の判断の基準を示しました。
そのうえで別府証人は、一日に多数のがん患者を対象に行う「イレッサ」の第三相比較試験結果が公表されたことについて言及。「第三相試験でも有効性が証明できなかったわけで、もともと医薬品として承認すべきでなかった。これで完全に(有効性がないことが)確定した」と明言しました。
次回、四月二十五日に被告側の反対尋問が行われます。
厚労相と会社に緊急申し入れ
薬害イレッサ訴訟原告団・弁護団は七日、柳沢厚生労働大臣とアストラゼネカ社にたいして、(1)新規患者への投与を原則禁止すること(2)国とアストラゼネカ社は、副作用被害者を発生させた責任を認め、賠償をすることを緊急申し入れました。