2007年2月7日(水)「しんぶん赤旗」

ホワイトカラー・エグゼンプション見送りへ

断念させるまで運動


解説

 政府・与党が「ホワイトカラー・エグゼンプション」の今国会導入を見送ったことは、労働法制改悪を許さない世論と運動の緒戦の成果です。

 しかし、政府・与党は参院選後にも国会提出をねらっており、二度と持ち出させないたたかいが焦点になっています。

 政府は「説明不足だった。理解を求めていく」(柳沢伯夫厚労相)といいますが、国民の願いに逆らう制度をいくら説明しても、理解など得られません。どの世論調査でも圧倒的多数の国民が反対しており、民意に背く制度はきっぱり断念するしかありません。

 先行実施を検討している残業代割増率引き上げは、上限時間の目安である月四十五時間までは現在のままで、それを超えてもなお努力義務にとどめるものです。四十五時間といえば毎日、二時間以上の残業をする水準です。これを容認することは許されません。

 もともと日本は残業時間の上限を法的に規制していないため、労使協定を結べばいくらでも残業させることができます。

 上限の月四十五時間も目安でしかなく、労使協定を結べばさらに五十時間まで延長できるため合計で“過労死ライン”の月八十時間を上回る過重労働まで認めているのです。残業時間を厳しく規制することこそ求められます。

 しかも政府は、割増率を明記せず、後から決めることにしています。引き上げに反対する財界の要求に沿ったものです。

 時間外労働を抑制するためには、企業が割増賃金を支払うより、新たな労働者を雇ったほうがよくなる水準まで引き上げることが必要です。

 アメリカ50%、ドイツ40%などに比べて日本の25%は極めて低い水準です。労働組合は50%以上にするよう求めていますが、実効ある水準まで引き上げるべきです。

 そもそも残業代を取り上げて長時間労働を強いるエグゼンプションを導入すれば、残業代を引き上げる意味などもなくなってしまいます。

 政府はこのほかにも、使用者が一方的に作成できる「就業規則」によって、賃下げなど労働条件を改悪できる条項を盛り込んだ「労働契約法案」を提出する予定です。労働者が反対しても使用者が都合のいい契約を押しつけられる仕組みになりかねません。

 政府・与党は「サラリーマンの労働環境改善に取り組む姿勢をアピールしたい」(中川秀直幹事長)といいますが、国民の目をあざむくことはできません。(深山直人)


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