2007年2月7日(水)「しんぶん赤旗」
主張
原発の検査不正
“安全偽装”に根本からメスを
東京電力が、法律で義務づけられた原発の定期検査で、長年にわたり不正、偽装を行ってきたことが、明らかになりました。
福島第一、第二、柏崎刈羽(新潟)の三つの原発十七基中、十三基で百九十九回の不正という膨大なもので、うち五十二回は非常用の炉心冷却系という原子炉の生命線での不正であり、深刻です。
柏崎刈羽原発では、冷却水が失われた時に作動するポンプの故障を偽り、検査で正常とみせかける悪質な偽装工作まで行い、ポンプが故障したまま運転再開していました。
原発の安全ないがしろに
東京電力は不正が「安全性に影響を及ぼすものではなかった」としていますが、安全をないがしろにした「耐震偽装」の原発版ともいえる重大な事件です。原発立地の自治体から「憤りを感じる」「企業体質に問題がある」と厳しい批判の声があがっているのは当然です。
東京電力など電力会社は、二〇〇二年にも原発の深刻な損傷を隠蔽(いんぺい)する大規模な不正事件が発覚し、世論の厳しい批判をうけました。にもかかわらず原子力安全・保安院や電力会社の対応は、「原発は安全」という「安全神話」にしがみつき、まともな反省のない態度に終始しました。
実際、事件をうけた総点検でも「新たな不正はない」とするなおざりな報告ですまされました。こうした態度を繰り返すことは許されません。今度こそ真剣な反省を行い、事件をうんだ原因に根本からメスを入れるべきです。
不正の動機、背景として、東京電力は、「(検査)工程を守ることが最大の関心事」「正直に物を言えない風土」などをあげています。こうしたことは、〇二年の損傷隠し事件や、十一人の死傷者を出した〇四年の関西電力の美浜原発事故の際にも指摘されたことです。不正根絶には、安全軽視、安全を後景に追いやる営利優先、率直に物を言えない企業体質、これらすべての徹底調査と掘り下げた原因究明が不可欠です。
不正を行っていたのは東京電力だけではありません。関西電力、東北電力、日本原子力発電でも原発の冷却用海水温度データの不正が判明しています。一連の不正発覚のきっかけとなった中国電力の水力発電所のデータ改ざんをはじめ水力・火力を含めれば、すべての電力会社が不正を行っていました。
経済産業省は、電力会社にデータ改ざんなどの点検を求めていますが、不正の当事者任せにはできません。電力業界に蔓延(まんえん)する不正の全容を明らかにするためには、第三者機関を設置して徹底的な調査をする必要があります。
安全をないがしろにする会社に原発の危険を増大させるプルサーマル計画を実施させることはできません。プルサーマルをはじめ核燃料サイクル計画は中止すべきです。
原子力行政の責任直視を
甘利明経済産業大臣は、今回の不正事件を「けしからんこと」と非難しています。しかし、形だけの検査で不正を見過ごしてきた行政自らの責任こそ問うべきです。
度重なる不正をなぜ見過ごしたのか、国の検査を縮小し、検査の多くを電力会社任せにしてきたことが影響していないのか、検査の在り方を抜本的に見直すことが不可欠です。
安全最優先の原子力行政へと転換するため、原発推進の経済産業省の中に置かれた原子力安全・保安院ではなく、独立した原子力規制機関を確立することが急務です。