2007年2月6日(火)「しんぶん赤旗」
社会リポート
悪質商法支えるローン契約
オリコ、請求を放棄
判決直前に訴訟取り下げ
悪質商法に遭いローン契約を結ばされた被害者に対し、代金支払いを求める訴訟を起こした大手クレジット(信販)会社「オリエントコーポレーション」(オリコ、本社・東京都千代田区)が一月、判決直前になって突然訴えを取り下げ、異例の「判決回避」で裁判を終結させました。背景には、信販会社のローン契約が悪質業者の「道具」の一つとして機能している実態があります。被害者の代理人は「オリコは裁判を不利とみて、判決で信販会社の責任が明らかになることを避けた」と批判しています。(安川 崇)
一月二十九日、東京地裁六百十七号法廷。原告オリコの代理人は「請求を放棄したい」と述べ、自らが起こした訴訟を終了させました。
事件の多くに大手
訴えられていたのは神奈川県川崎市に住む女性。悪質商法の一つ「絵画レンタル商法」の被害に遭いました。
女性は二十歳代後半だった二〇〇五年二月、販売業者「K’s工房」(K社)から電話で「絵画を購入し、その絵画を展示場にレンタルすればレンタル料が入る」と勧誘され、九十八万円の絵を購入。代金はオリコがK社に一括払いし、女性はオリコに対し、手数料などを合わせ百二十七万円を分割で支払う契約を交わしました。
しかしレンタル料が振り込まれたのは三回だけ。その後K社と連絡がとれなくなり、ローンだけが残りました。支払いは滞り、オリコから全額支払いを請求されたのです。
絵画レンタル、訪問リフォームなどの悪質商法被害に共通するのは、悪質業者があらかじめ信販会社と「加盟店契約」を結び、信販会社から代金の一括払いを受ける構図です。業者は代金を持って姿を消し、被害者は信販会社に分割で「返済」することになります。
多くの事件で、オリコなど大手信販会社が契約にかかわっています。いわば、信販会社が悪質商法を影で支えるしくみです。審査のずさんさも特徴で、契約額が被害者の支払い能力を大きく超えるケースも多く、多重債務への入り口になるケースも少なくありません。
クレジット問題に詳しい池本誠司弁護士は、「信販会社が販売業者の契約を無批判に受け入れるのが問題。悪質商法を助長し、利益を共有している」と指摘します。
信販会社も責任を
冒頭の裁判で女性側は「詐欺的商法であり、支払い義務はない」と争いました。訴訟手続きは終了し、昨年十二月末に判決が出る予定でした。
しかしその直前、オリコ側が裁判長に弁論再開を申し立て、請求を放棄しました。別の被害者を訴えていたケースでも後日、自ら請求を放棄しました。
異例の結末。オリコは本紙取材に「支払いを求める法的根拠はあるが、立証困難と判断した。K社が詐欺的商法を行っていたという認識はなかった」と説明しています。
女性の代理人を務めた斎藤雅弘弁護士は「オリコが判決を恐れるのは、ほかにも問題のある業者のクレジット契約を多数かかえているからだ。悪質業者だけでなく、信販会社の責任も問うべきだ」と話しています。
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悪質商法と信販会社、割賦販売法 現行の割賦販売法は信販会社に対し、加盟店の営業手法などを調査管理する義務を明記していません。また、顧客の支払い能力を超える契約をしないよう求める規定はあるものの、罰則はなく、努力義務にとどまります。このため、悪質商法対策に取り組む弁護士らは改正の必要性を訴えています。